文禄二年二月二一日 「紙筆など、女子供、次男以下、年寄、癩の遊び道具。 家督は一に筋肉、二に筋肉、三四がなくて五に筋肉!!」 早朝から、わしが腕立てしている所に、相良(さがら)二〇代当主・長毎(ながつね)一九歳がやって来… [続きを読む]
文禄二年二月二〇日 日本男子で、長男で、家を守り、君に仕え、仏を信じ、壮健で、腕力があり、癩でなく、年寄でなく、男色でもなく―― 半年ほど前に、朝鮮王子の臨海君(イムヘグン)二二歳と順和君(スンファグン)一… [続きを読む]
2月15日 昨年(文禄元)四月に日本軍は、朝鮮に侵攻。朝鮮王朝に恨みを持つ官吏・鞠景仁(ククギョンイン)らは、朝鮮東北・咸鏡道に逃げ込んだ臨海君(イムヘグン)二二歳と順和君(スンファグン)一四歳を捉えた。 咸鏡道に侵攻し… [続きを読む]
11月24日 悪いのはいつも他人。わしはいつも被害者。 例えば、明・李如松に城を落とされた小西行長。 同胞の勘違いが、わしの進みを止める。 悪いのはいつも他人。だから己を省みたことがない。 例えば、義兵将・郭再祐に迎撃さ… [続きを読む]
9月27日 朝鮮へ出兵した日本軍は、朝鮮・明連合軍に敗北して首都漢城(ソウル)に集結。 然しながら唯一、加藤清正の第二軍は、いまだ朝鮮東北・咸鏡道に踏ん張る。 他の諸将がわしの足を引っ張る。 小西行長、小早川隆景、立花宗… [続きを読む]
8月3日 朝鮮宰相の柳成龍が暗躍し、明に援軍を要請。明・李如松軍四万が小西行長籠る平壌城を包囲した。 明の優れた大砲に耐えられず、小西軍はソウルに向かって南下、敗走した。これにより日本軍、朝鮮東北・咸鏡道に踏ん張る我が第… [続きを読む]
3月21日 世界がうらやむ素晴らしき日本。それもこれも英邁な君主・秀吉公のお陰。我等はこのご恩に報いるべく秀吉公の願い・明制圧を助けてやるべきであろう。 それを何を勘違いしたのか、ソウルに在陣する朝鮮奉行・大谷吉継が鍋島… [続きを読む]
12月22日 日本男子たるもの、御国に殉じる覚悟で他国を侵し、日本の武威を世に轟かすべきであろう。しかしすぐに音(ね)を上げ、こらえ性がない、婦女子のような輩が多すぎる! 第二軍の加藤清正一万、鍋島直茂一万二千、相良長毎… [続きを読む]
9月17日 どうしよう… 日本が好きすぎて眠れない。 日本が一つ、日本が二つ、日本が三つ……日本が一五三七つ… 嗚呼!!日本が素晴らしすぎて眠れない。 日本の素晴らしきはその民族であろう。周りと同じであることと、他人に迷… [続きを読む]
加藤清正くんの日記:第42回 義兵将・鄭文孚(チョンムンブ)
6月5日 わしは最近、朝鮮人を見直しし始めていた。 太閤殿下の命により、日本軍が朝鮮へ侵攻。首都ソウルを制圧すると、清正軍は朝鮮東北・咸鏡道(ハムギョンド)に侵入。 咸鏡道会寧(フェリヨン)の役人・鄭末守(チョンマルス)… [続きを読む]
3月6日 「キヨマサドノ、オカワリ!」 と順和君(スンファグン)が皿を片手に叫んだ。こいつは去年、朝鮮東北・咸鏡道(ハムギョンド)に侵入した際に捕らえた朝鮮王子。 それはいいんだが育ち盛りの一三歳。恐ろしい程よく食う。 … [続きを読む]
12月27日 年末年始は蔚山倭城の戦い。 刺激が欲しいのなら、明・朝鮮連合軍六万に包囲されるもよかろう。 これに対する城内の日本軍わし以下二千。 飢えと寒さと恐怖に耐えきれないくて、敵軍に投降する裏切者は叩き斬ってやる。… [続きを読む]
10月4日 今日も君のために咸鏡道(ハムギョンド・朝鮮北東部)を走り続けるよ。 オランカイ(満州)はまだかしら? 日本の他には、朝鮮も明も南蛮も天竺もいりはしない。 全ての国が日本になってしまえばいいのに。 … [続きを読む]
2月5日 わしが朝鮮慶尚道に築城していた蔚山(ウルサン)倭城は、明の経略・楊鎬(ようこう)と提督・麻貴(まき)、朝鮮の権慄(クォンユル)率いる連合軍六万に包囲されて今日(旧暦12月27日)で五日目を迎えた。 もうすぐ正月… [続きを読む]
1月9日 新年、明けましておめでとうございます。 今年も宜しくお願いします。 …どころじゃないわ!! 太閤殿下の命でわしは、去年の旧暦11月10日から朝鮮慶尚道の蔚山(ウルサン)に倭城を築城していた。 しかし城普請が完成… [続きを読む]
10月22日 太閤秀吉様の明国制圧の野望に応えるべく、わしは朝鮮の釜山(プサン)に上陸した。 第一軍の小西行長は既に釜山、東萊(トンネ)、尚州(サンジュ)、忠州(チュンジュ)をやすやすと攻め落とした。 何やってんだ、朝鮮… [続きを読む]
9月7日 ご近所だというのに、小西行長にここ二か月逢っていない。 この奇跡に喜んでいたのもつかの間。 一昨日と昨夜、二日連続わしの夢に小西が出てきた。 何やってんだろう…わし。 ここ二か月の奇跡が台無しだ。 何やってんだ… [続きを読む]
11月15日 わしのかあちゃんは、なんかの抽選会で来月大坂城で行われる天正少年使節団のコンサートのペアチケットを見事ゲットした。 大喜びのかあちゃんは「おまえのお父さんが生きていたら、お父さんと行ったのだけど、今はいなし… [続きを読む]
5月7日 空と海はどれほどの違いがあるのだろう。 頭上には魚が泳いでいた。 これ以上、世間に合わせて偽りの人生を歩むのなら、わしの魂が崩壊してしまうだろう。 世間を敵に回してでも自分の気持ちに正直に生きたいと思った朝。頭… [続きを読む]
11月20日 秋の終わり。太閤殿下から茶会に招かれたわしは、熊本から遥々大坂城に出向いた。 久しぶりにお逢いした殿下は、茶会は佐吉(石田三成)に任して、でんでん太鼓片手に、息子のお拾君(ひろいぎみ)の尻を盲目的に追いかけ… [続きを読む]
加藤清正くんの日記:第31回 散々な時に聴こえてくるゴスペル
3月4日 「熊本城って世間で言われる程、かっこよくないじゃん。わざわざここまで来たのにガッカリ~」 わしは熊本城下でそんな戦国観光客の声を耳にした。自分を全否定された気持ちになって、なかなか寝付けなかった夜、聴こえてきた… [続きを読む]
10月20日 「才気ともに、我と異ならざる者は、すなわち治部少輔一人あるのみ。」 そんなふうに太閤殿下に高く評される佐吉(石田三成)は、なんて幸せな武将なのだろう。 佐吉は、ある時は博多町奉行として衰微していた博多の町を… [続きを読む]
7月16日 太閤殿下に所用があって大坂城に出向くと偶然、備前国の宇喜多秀家殿とはち合わせた。そして秀家殿に今宵、夕食を共にしないかと誘われた。 大坂城下のとある寺の一室。「小西行長は私の元家臣なのですが、肥後国で元気でや… [続きを読む]
6月14日 全国の戦国百姓が選ぶ名城百選。今年の1位は大坂城、2位が江戸城、3位は佐和山城、そして4位がわしの熊本城であった。 「なんで熊本城が、佐吉の佐和山城なんかに負けなきゃならんのだーーッ!」 「俺の宇土城なんか、… [続きを読む]
4月17日 黒と赤と青の鯉が三匹、海ではなく何故かニッポンの空を泳ぐ。 今日、小西んちの宇土城を見たら、鯉のぼりを上げていた。地震で何もかも滅茶苦茶になったニッポンに於いて、今年は何だか気持ちがギリギリで、鯉のぼりを上げ… [続きを読む]
1月24日 いつからだろう。豊臣政権にとって、武功派のわしが、いてもいなくても、どうでもいい存在になってしまったのは。 太閤殿下から、ここ肥後国を与えられたことは、とても喜ばしいことである。けれど物理的だけでなく、心理的… [続きを読む]
11月7日 五日前、大坂城で大きな地震があったらしい。太閤殿下や秀頼様はご無事だろうか。 わしは居ても立っても居られずに急ぎ馬に飛び乗り、大坂城を目指した。その途中、「おい、清正!」と隣り近所の小西行長に声をかけられた。… [続きを読む]
8月6日 戦国時代には、明確な国境や村境などなかった。境はその国や村に住む人々の「心」が決めていた。 そして境には目印として、樹木や神札などを置く風習もあった。 小西行長は、小西領と加藤領の境に目印として、手に弓矢を持ち… [続きを読む]
5月30日 今日、福岡の黒田長政殿の屋敷に、久しぶりに遊びに行くと、偶然、愛知から市(福島正則)も遊びに来ていた。 昼間から夜更けまでわしら三人、酒を酌交し大いに盛り上がった。そして酒が回ってきて眠くなってきたわしは、長… [続きを読む]
4月22日 わしは今日、じぶんちの屋根の上に鯉のぼりを飾った。そして屋敷の外に出て、青空を悠々と泳ぐ鯉のぼりを、ぼーっと眺めていた。 その時、「すげー!何この立派な五月人形!」と隣り近所の小西行長がやって来て、わしの体を… [続きを読む]
3月3日 朝、屋敷の門を強く叩く音が聞こえた。門を開けると、隣り近所の小西行長が立っていた。 「五人囃子の笛を吹いているヤツ、貸して。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「雛人形を押入れから出して飾ろうと思ったら… [続きを読む]
12月8日 わしの熊本城には、昭君の間(しょうくんのま)という、豪華絢爛な特別な部屋がある。これは大坂城に有事があった際、豊臣秀頼様を熊本城にお迎えし、秀頼様にご使用していただく為に作ったものだ。 わしは今日も、この昭君… [続きを読む]
11月8日 昨日の夕方、小西ご近所行長が、「石田三成が遊びに来ていて、一晩うちに泊まるから布団を貸してほしい。」とうちに頼みに来た。小西のうちの余っている布団は、穴が空いているものばかりらしい。 わしは布団を小西に貸した… [続きを読む]
10月11日 昨夜、わしが眠りについた頃、屋敷の門を強く叩く音が聞こえた。門を開けると、隣り近所の小西行長が立っていた。 「歯磨き粉、貸して。」 と戦国パジャマ姿の小西は言った。わしは溜息をついて、小西に歯磨き粉を貸した… [続きを読む]
9月5日 わしは今日、近くの川に釣りをしに出かけた。なかなかお目当ての魚が釣れない。しかし陽が落ちてきたので、釣り道具と釣れた魚を持って家路に向かった。 その途中、隣り近所の小西行長の屋敷からいい匂いがした。するといきな… [続きを読む]
8月13日 夕飯を食べている時、うちの門を強く叩く音が聞こえたので、わしは戸を開けた。小西ご近所行長が立っていた。醤油でも借りに来たのかと思ったら、 「ドレッシング貸して。」 と言われた。果たして、隣人にドレッシングをい… [続きを読む]
7月7日 今日は町内会長殿と寺で、来月の夏祭りの打ち合わせをした。帰り道、小西行長の屋敷の前を通ったら、大きな竹が飾ってあった。小西も、七夕をやるのか。 小西のことだから短冊に、「清正が早く引越しますように。」とか書いて… [続きを読む]
6月3日 夕飯時、小西ご近所行長がわしの屋敷にやって来た。そして玄関先で小西は「お前んちのレンジ貸してくんない?」と言った。 「昨日作りすぎたシチューを温めてなおして、今夜また、食べたいんだ。」と小西は手にしている、器に… [続きを読む]
5月4日 今日は小西ご近所行長が、先日おすそ分けした煮物の器を、珍しくうちまで返しに来た。その時小西は、うちの玄関に飾っている五月人形にを見て言った。 「蛇の目紋が入っている長烏帽子の兜・・・この五月人形、もしかして清正… [続きを読む]
3月29日 わしは今日、近くの川に釣りをしに出かけた。なかなかお目当ての魚が釣れない。しかし陽が落ちてきたので、釣り道具と釣れた魚を持って家路に向かった。その途中、隣り近所の小西行長の屋敷からいい匂いがした。「小西のうち… [続きを読む]
2月24日 今日は戦国廃品回収の日。わしは読了した30冊の戦国雑誌を束ね、近所の戦国ゴミ収集場に出かけた。すると隣り近所の小西行長も、戦国雑誌を出しに先に来ていた。小西におはようと挨拶した時、雑誌を束ねていたひもが切れて… [続きを読む]
1月30日 今月も、戦国回覧板を回す為、隣り近所である小西行長の屋敷に、わしは出向いた。すると小西の屋敷の門前に、加藤家の器が置かれてあった。先日、うちで作りすぎた煮物をこの器に入れて、小西宅におすそわけしたのだった。小… [続きを読む]
1月15日 「今夜、泊めていただけませんか。」 と布団を背負ったわしは、隣り近所の小西行長の屋敷の門を叩いた。小西はもそもそ出てきて、「おまえの熊本城、火事にでもなったか?」と言った。 「いや、ゴキ※※一匹が、城内に出た… [続きを読む]
12月14日 戦国熊本限定回覧板が回ってきた。今月の連絡事項はふたつ。年末年始は夜、騒いだりお酒を飲みすぎたりして、近所にご迷惑をかけないこと、来年の年始の餅つき大会は1月3日朝9時から行われること。わしは了解し、印を押… [続きを読む]
11月3日 「お菓子くださーい。」 と、隣り近所の小西の屋敷の門を叩いた。小西はぎょっとした表情で、屋敷から出てきて、「そのかぼちゃのかぶりものは、ハロウィンのつもりですか。気持ちわるい。」と言った。 「キリシタン小西と… [続きを読む]
10月1日 屋敷の門を叩く音がしたので、門を開けてみると、戦国宅配便のお兄さんが立っていた。「すみません、隣りの小西さんがご不在なので、小西さんの荷物、預かっていただけませんか。」と言われ、わしは快く小西の荷物を預かった… [続きを読む]
8月31日 小西行長ーーーッ!!! 今日は肥後国(熊本県)戦国防災訓練の日だ。何故、来ない。何故、参加しない。地域のコミュニティを破壊する者を、わしは許さん。ということで、隣り近所の小西の屋敷の門を叩いた。 「・・・あ・… [続きを読む]
8月1日 石田三成ーーーッ!!! 先日、太閤殿下・秀吉様に、お中元として、わが熊本城が開発した食べれる畳(味噌味)777枚を贈った。しかし殿下の側近・石田三成が、こともあろうに返品してきた。 「食べれる畳(味噌味)777… [続きを読む]
7月4日 小西行長ーーーッ!!! 二ヶ月前に貸したお味噌は、いつ返してくれるんだ・・・。 わしの屋敷に残っていた味噌は、全て使いきってしまった為、小西のおかげで、この一週間、わしは味噌汁を飲んでいない。しかしわしは、必ず… [続きを読む]
6月15日 小西行長ーーーッ!!! 朝、自分の屋敷の前を、ほうきで掃くのは構わない。構わないが、はいたゴミを、ちりとりで取るわけでもなく、隣り近所のわしの屋敷の前に、ゴミを飛ばしてくるのはやめてくれ。こういう常識のない人… [続きを読む]
5月22日 はじめまして。熊本県在住の清正じゃ。今日は同じく熊本在住、わしのお隣りさん・小西行長が、わしの屋敷に夕方やって来た。 「清正殿、今晩、味噌汁を作ろうとしたら、お味噌が足らなくなって、お味噌、貸してもらないでし… [続きを読む]