加藤清正くんの日記:第31回 散々な時に聴こえてくるゴスペル
「熊本城って世間で言われる程、かっこよくないじゃん。わざわざここまで来たのにガッカリ~」
わしは熊本城下でそんな戦国観光客の声を耳にした。自分を全否定された気持ちになって、なかなか寝付けなかった夜、聴こえてきたのは隣りんちのゴスペルだ。
「小西ご近所行長、今何時だと思ってんだ!」とわしは部屋の窓を開けて小西に苦情を訴えると、「南蛮寺で歌うゴスペルの練習が昼間できないんだから仕方ないだろ!」と小西は宇土城の窓から叫んだ。
それにしても最近、槍働きを得意とするわしの活躍する場が少なくなってきた。自分の進むべき道を見失った、そんな夜も隣りんちからゴスペルが聴こえてきた。

小西行長
「小西、おまえのゴスペル、うるさい上に音外しすぎなんだよ!」「俺の美声をタダでしっかり聴いてんじゃねえよ!」
城造りも槍働きも自分の得意とするものが、そんなにたいしたもんじゃない気がした時、追い打ちをかけるように聴こえてくるのは、やっぱり隣りんちのゴスペルだ。
「小西、そんなに練習しているのに、何故ちっともうまくならないんだ!」「とか言って俺のゴスペルに毎日励まされんのは、そっちだろ!?」
そんな独りよがりのゴスペルに励まされるわけないだろ。微かな光を探すように、今日もおまえの下手なゴスペルを聴いたりはしない。まさか聴いたりしないんだ。
カテゴリ:加藤清正くんの日記 | 2012-03-04 公開
« 豊臣秀吉くんの日記:第24回 傷だらけのヒーロー 後藤又兵衛くんの日記:第49回 嘘のつけない軍師 »
ランダムデイズ
- 明智光秀くんの日記:第33回 3,700円也
- 真田幸村くんの日記:第30回 昇進
- 加藤清正くんの日記:第47回 阿波踊りにしやがれ
- 毛利秀元くんの日記:第10回 医僧・慶念、現る
- 織田信長くんの日記:第43回 安土城の襖絵