山内千代さんの日記:第39回 一豊が名馬が欲しいと言った時


山内千代戦国26年7月4日

一豊が名馬が欲しいと言った時、私は嫁入りの時の持参金である10両(現在でいうと80万円相当か)を一豊に渡した。

その10両で一豊は名馬を買い、名馬を持つ一豊は織田信長様の目にとまった。

その結果、私を内助の功だの良妻だの称える人が出て来た。しかし信長様の目にとまらなかったら、この評価は果たしてどうなっていたであろう。

しかも私が一豊に10両渡した理由は、一豊の立身出世の為などではない。

貧乏侍が名馬に乗っていたら面白そうだから。

ただそれだけなのだ。

織田信長様の目にとまったのは”たまたま”に過ぎない。

“たまたま”がなければ、一豊と私は名馬を買ったが為に金銭的にひどく困窮するはずであった。バカである。それでも一豊と私は名馬が欲しかった。

この本能の迫力はどこからやってくるのだろう。私にはわからないが、自分が面白いと思うことをやること以外、この人生、一体何をしようと言うのか。織田信長

切実に、私は明日より今日の方が大事だった。私を今日一日だけに専念させてほしい。

このままではヤバイという状態に身を置いてないと意欲が湧かない。

破滅への遁走より、破滅へ前のめりになる自分がいて、その瞬間、私の生は最も輝くだろう。

自分がこんなにも破滅的とは知らなかった――

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