明智光秀くんの日記:第33回 3,700円也


明智光秀1月26日

私が安土城の廊下を歩いていたら、前方から松永久秀殿がやって来て、「おい、明智。丹羽長秀いるか。」と私に尋ねた。

「安土城の小部屋で、戦国フリーペーパーの安土城だよりを編集していると思いますが。」と私は答えた。「その安土城だより3月号に、俺様が書いた男女の契りの指南書の広告をつけてもらおうと思って。

「その本、売れているんですか。」「30部しか売れてない。」私は噴き出した。「何、笑ってんだよ。傷つくだろ。」「松永殿でも傷つくことあるんですか?!

本が売れなくて、すんげー傷ついてるよッ!俺様のこの男女の契りの指南書は、知的で面白くて、為になって実践すれば健康になれるんだ。なのに世間じゃ、ただのエロ本扱いだ。一生懸命取組んだことが、誰にも認められない現実に、俺様のプライドはズタズタだ。

「わかります。」「なんで明智がわかるんだよ。

「私も、自分ではいい仕事をしているつもりでも、人に認められることは少ないからです。松永殿の本、私が一冊、購入しても宜しいですか。」「同情はいらない。」「いいえ、松永殿が執筆された本に興味があります。おいくらですか。」

松永久秀3,700円。

「え、高ッ!やっぱりやめます。」「冗談を言うな。特別にサインしてやっから。」と松永殿はサラサラと筆で、

明智の誰にも認められない努力が、いつか報われますように。松永久秀

と表紙の裏にサインをした。私はまた噴き出してしまった。

努力は報われないことが多いけれど、腐らずに前を向いて歩いているのは、私ではなく松永殿の方かもしれなかった。

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