藤堂高虎くんの日記:第7回 喪失の果て


藤堂高虎戦国28年8月2日

先月の初旬、功名を焦った脇坂安治が手勢の水軍のみで釜山から巨済島へ出撃。

李舜臣率いる朝鮮水軍は、脇坂の水軍を閑山島で、脇坂の救援に駆け付けた九鬼嘉隆隊長と加藤嘉明殿の水軍を安骨浦で撃破した。

隊長と加藤殿は、茫然自失となって一週間前に釜山に帰還。

脇坂とその生き残りに至っては、小舟で閑山島に上陸し、朝鮮水軍の追手に気付かれぬよう糊口をしのぐこと数週間。本日、変わり果てた姿で釜山に帰還した。

私は脇坂を風呂に入れたあと、

「ご無事でよかった。」

と脇坂の足の傷に薬を塗った。

いっでええッ!!

と脇坂は悲鳴を上げた。

だいたい藤堂、おまえが予め、朝鮮水軍のめくら船(亀甲船)のことを話してくれれば、こんなことにッ!

と脇坂は私の胸ぐらを掴んだ。

止めよ脇坂。おぬしが藤堂の話に耳を傾けなかったのだ。

と隊長が隣りでトッポギを食べながら言った。

いい加減、もっと謙虚になってくださいよ。

と加藤殿がそのまた隣りでチヂミを食べながら言った。

なんだてめえ、もっかい言ってみろ!

脇坂殿のせいで隊長も私も多くの艦隊と部下を失ったんです!

止めぬか、味方同士で争うでない。

「あ、李舜臣だ!」

李舜臣

李舜臣

ぎゃああああああ!!!

脇坂は再び悲鳴を上げて加藤殿の影に隠れた。

「冗談ですよ。」

隊長と加藤殿と私は笑った。

そう、私たちは笑うしかなかった。

何もかも失わないように、善人という名の太閤の家畜になったのに、結局何もかもを失うなんて。

だから善人なんてもうやめて、今日から私たちは狂うしかない。

何故なら、あなた(李舜臣)が狂っているのだから――

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