松永久秀くんの日記:第72回 こんなふうに桜が散っていた
4月7日
桜の季節には思い出すよ。
その昔、俺様が三好家に仕官して5日あたりのことだ。
三好家で新入家来歓迎会があって、俺様は他の新入家来とともに参加した。
その席で、新入家来一人ずつ譜代家臣たちの前で自己紹介することになった。
俺様の番が回ってきた時、俺様は緊張しながら、「畿内出身の松永久秀と申します。寺小姓をしていたことがあって、槍働きより、どちらかいうと文字を読んだり書いたりする方が得意です。宜しくお願いします。」と手短に挨拶した。
その時、ひどく酔った老臣が奥の方からいきなり「趣味は!」と俺様に向って叫んだ。
俺様は驚きすぎて、
「趣味は人の悪口を言うことです!」
と馬鹿正直に答えてしまった。
新入家来と譜代家臣の皆はあんぐり口を開き、一瞬冷たい空気が流れたが、どこからともなく、
「アハハハハ!」
と屈託のない笑い声が聴こえてきた。俺様の最初で最後の主君となる三好長慶だった。

桜吹雪
「私の趣味もあなたと同じです。奇遇ですね。あなたとは気が合いそうだ。」
と年若い長慶は微笑んで、俺様の盃(さかずき)に酒を注いでくれた。
桜の季節には思い出すよ。
今は亡き長慶と俺様の出逢いを。
こんなふうに桜が散っていた。
こんなふうに桜が散っていた。
そう、こんなふうに桜が散っていたんだ。
カテゴリ:松永久秀くんの日記 | 2014年4月7日 公開
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