小西行長くんの日記:第60回 ずっとあなたが嫌いだった

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小西行長戦国29年11月5日

ずっと「いいヤツ」と言われ続けてきた。

親孝行は当たり前。侍になりたかったけれど、堺の商人である父の仕事を手伝った。

お客様のためなら残業は当たり前。休みなく働いて親子揃って「海の司令官」と称された。

その才覚を認められ、宇喜多家に引き抜かれ、本能寺の変のあとは秀吉様に仕官。父と共に瀬戸内海の軍需物質運搬などにあたり、肥後半国を賜った。

そんな喜びも束の間、秀吉様の命で朝鮮へ侵攻することに。それはちょっと…と思ったけれど、先鋒隊を仰せ付かった小西軍は、破竹の勢いで釜山から北上、半月で首都ソウルを制圧。

更に北上して平壌もあっさり制圧した。決して周りの期待を裏切ったりしない。しかし朝鮮を救うべく明の大軍が平壌城に向けて大砲を撃ち込んだ瞬間、私の成功哲学が打ち砕かれた。

「そんなまさか…」

ここから私と家臣たちの敗走が始まった。数日何も口にすることができず、まめだらけの足の痛みに耐えながら朝鮮軍に見つからぬよう南下。やっとの思いで黒田長政籠る黄海道白川に辿り着いた。

長政殿は大きなまなこを見開いて驚き、

水だ、水!医者も!

と家臣に命じ、敗残者の私たちを迎え入れてくれた。私は礼を言ったあと、息も絶え絶え事の次第を伝えた。

何に対しても不器用さを感じさせない小西殿もヒトだったのね。

黒田長政と長政殿から水を渡された。

「え?」

ずっとあなたが嫌いだった。

ずっと「いいヤツ」と言われ続けてきた。

決して周りの期待を裏切ったりしない。

俺はその場に倒れた。

カラカラの喉を水で癒す前に――

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