毛利秀元くんの日記:第14回 そうこなくっちゃ!
10月20日
ソウルへの再侵入を目指し北上した黒田長政軍と我が軍は、これを阻止すべく待ち受けていた明軍と忠清道・稷山(チクサン)の戦いで戦闘となった。
双方ともかなりの死傷者を出し、決着はつかず、日暮れになって両軍とも引き上げた。
「クソッ、ギョーザ野郎どもが!!」
と長政殿は地を激しく打って慟哭した。日本軍が朝鮮へ再出兵してからというもの余裕しゃくしゃくで勝利を重ねてきたのに、ここにきて行く手を阻まれた。
明経略・楊鎬(ようこう)によって――
その僅か一〇日後、今度は全羅道・鳴梁(ミョンリャン)海峡で日本水軍一三三隻が朝鮮水軍一三隻に撃破された。この報を釜山日本本営に帰還する途中に受けた長政殿と僕は耳を疑った。
「信じがたい…」
「恐らく、李舜臣(イ・スンシン)が水軍司令官として復帰したことが大きいかと――」
と僕は釜山日本本営から文を握りしめた。
「あのチヂミ野郎!!我らソウル再侵入も果たせず、制海権を朝鮮水軍に握られては――」
「そうこなくっちゃ!」
「は?」

チヂミ野郎ですが何か?
「いや、その…」
と僕は慌てて訂正したものの、危機的状況がない人生なんてつまらなくないだろうか。
やっぱもう、普通の侍ではいられない。
そういえば僕は両班(ヤンバン)侍。
今日まで保身のために、どれほど自分を偽って生きてきたか。
実はギョーザもチヂミも嫌いじゃない。大好きだと叫んでも構わない世が来るまで、両班侍として死ぬ気で戦ってやる。
僕が僕らしく生きるためにはやっぱ、そうこなくっちゃ!
カテゴリ:毛利秀元くんの日記 | 2017年10月20日 公開
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