毛利秀元くんの日記:第7回 浅野幸長くんと両班侍の僕


毛利秀元8月10日

日本軍は今年、朝鮮へ再出兵し、この夏に慶尚道・黄石山城と全羅道・南原城を陥落させた。これを祝うため真っ昼間から全羅道・全州(チョンジュ)で宴が開かれた。

戦功の証として、朝鮮の老若男女から削いだ鼻は数知れず。

そのことは都合よく考えないことにしてバカ騒ぎしている大人たちに僕は反発して、宴の途中で外に飛び出した。

すると炎天下、浅野幸長(よしなが)殿が槍を振り回していた。彼は豊臣五奉行筆頭・浅野長政の嫡男だ。

「幸長くん、宴に顔も出さずに何やってんの!?」

と僕は声をかけた。彼はじろりと僕を見て、

見ればわかるだろ、槍の稽古だ。というか馴れ馴れしく幸長くんとか呼ぶんじゃねえッ!!

と憤激した。どうして右軍のメンバーは、加藤清正・黒田長政しかり、こう、血の気が多いのだろう…

「年も近いし、縁あって君も僕も同じ右軍だ、仲良くやろうよ。」

確かに秀元殿は一九で僕は二二、年は近い。だけど君は右軍総帥、僕はその配下。

浅野幸長

浅野幸長

君は飾りとして総帥の座にただ腰かけていればいいが、僕は最前線で危険を冒して戦わねばならない。そんな君と僕が仲良くなれるわけないだろ?

「僕は飾りでいるつもりはない。右軍総帥として幸長くんを全力で守るよ。」

嗚呼、君のそういう優等生ヅラ、ホント、ムカつく。両班(ヤンバン)みたい。

「意味わかんないんだけど…」

身分が高いってだけで偉そうに!ってこと。僕はこの異国の地で必ずや君より戦功を立てて帰国する。君のような両班侍だけには絶対に負けたくない。覚えておけ!

そう言って幸長くんはこの場を去った。

取り残された僕は一人、両班侍って何だよ…っておかしくなって笑った。

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