豊臣秀吉くんの日記:第52回 朝鮮通信使来日
天正一八年四月二〇日
宗義智二三歳と僧の景轍玄蘇(けいてつ-げんそ)五四歳が対馬に帰還。
則ち義智・玄蘇は我が国に、朝鮮通信使正使・黄允吉(ファン・ユンギル)五五歳、副使・金誠一(キム・ソンイル)五三歳、従事官・許筬(ホソン)四三歳らをもらたした。
通信使らが対馬の港で船から荷を下ろしていたところ、義智家老・柳川調信(しげのぶ)五二歳が
「殿!」
と義智に駆け寄ってきた。
「ご無事で。」
「この通り。対馬は変わりないか。」
わしの大命を果たした義智は、誇らしげだった。
「ええ、まあ…。思いの外、通信使というのは大勢なのですね。」
「楽隊含めて二〇〇人。朝鮮の礼だそうで、私も聊(いささ)か驚いています。」
と玄蘇が苦笑した。
「困ります。」
調信は頭をもたげた。
「どうされた。」
「関白秀吉公、東国の小田原征伐のため出陣、先月より京を空けておられるようで…。」
「は?」
「いつ帰京されるのか。」
「検討もつきませぬ。来月かもしれませんし、半年先かもしれ…」
「半年先!?」
義智は雷にでも打たれたかのように衝撃を受けた。その時、背後から
「ウェンニリセヨ?(どうされましたか)」
と正使・黄允吉が尋ねた。義智は振り返って、
「アハ、アハハハハ…」
笑うしかなかった。
カテゴリ:豊臣秀吉くんの日記 | 2022-12-29 公開
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