豊臣秀吉くんの日記:第42回 柳成龍 登場
天正一七年一一月一日
今、この時。
わしが漢城(ソウル)東平館に留め置かれている宗義智が、こんなふうに考えないと考えるだろうか。
たかが日本に通信使を派遣するだけのこと。
それだけのことを、この国の朝廷はかれこれ四ヶ月も論議している。
毋欲速(すみやかならんと ほっすることなかれ)
時然後言(ときにして しかるのちにいう)
わかってる。
わかってるんだけど、私にしたってこれ以上、内に自らを省みるゆとりはない。
二年前の、最初の通信使要請に対しては、橘康広が日本の使者として来朝。
しかし通信使来日叶わず、関白(秀吉)に斬られた。
この度は私の首だけでは済まないだろう。
後ろには小西軍と加藤軍が控えている。
通信使を来日させることで全てが変わるとは思わない。
だけど関白の朝鮮侵攻を遅らせることはできる。
その間に朝鮮は、半島の海岸をはじめとする、国の防備を固めることができる。
朝鮮を失っては数百年、朝鮮と日本の仲介貿易で暮らしていた対馬も生きていけない。
もうこれ以上は待てない。
私ではない。関白が。
それで後悔しないほどに論は尽くされたはずだ。
――なんてことを義智が考える、考えない。
想いが通じる、通じない。
柳成龍は朝に講い、ついに通信を決めた。
高麗王(宣祖)が使わすべき者を選ぶことを命じる。
大臣は、地方官僉使・黄允吉(ファン・ユンギル)、成均館司成・金誠一(キム・ソンイル)をもって上副使となし、典籍・許筬(ホソン)を書状官と成した――
カテゴリ:豊臣秀吉くんの日記 | 2022-02-28 公開
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