豊臣秀吉くんの日記:第34回 ジリジリ
天正一七年三月二八日
「昨年、高麗王に参内あるべしと命じたのに、いまだ上洛せぬ。どういうことじゃ。」
わしは扇子片手にあくびをしながら、側近の浅野長吉(長政)に尋ねた。
「ははあ!申し訳ございません。」
長吉は平服した。
「宗義智は高麗へ渡海し、当夏中に国王を連れてくること。少しでも滞れば、京は遠方にて、義智は小西摂津守(行長)、加藤主計頭(清正)に報せよ。」
「ははあ!対馬守(義智)にしかと申し伝えます。」
その十日後。
「某は先に朝鮮に到り、関白秀吉様の命を諭し、国王をして来朝されよ、と伝えます。願わくは行長、清正が海を越える期を弛めてくださいませ。」
と長吉は宋義智からの文をわしの前で読み上げた。
「その請を許す。」
「有り難き幸せ。対馬守に代わってお礼申し上げます。」
長吉は平伏した。
はあ。何の冗談であろう。
何回も、何度も、何年も。
ジリジリ、イライラ。
飽きるほど、耐えらきれぬほど。
期待するのは勝手。
せいぜい真綿で首を絞められぬよう。
カテゴリ:豊臣秀吉くんの日記 | 2021年4月18日 公開
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