第二部 侍韓流ドラマ

戦国デイズ – 武将たちの日記

豊臣秀吉くんの日記:第87回 北信愛(のぶちか)の憂い


豊臣秀吉天正一九年五月八日

昨日筵中(えんちゅう:講義内)の語を見ますに、金睟(キム・ス)の憂う所もまたしかり。

領議政(宰相)・李山海(イ・サンヘ)が、左議政(副首相)・柳成龍と右議政(副首相)・李楊元に言う。

とはいえ…我々臣下は既に上(かみ:明)を犯す語を聞き、どうして黙々として皇上(こうじょう:明皇帝)のお耳に挟まないでおれましょう。しかし奏文の語に十分な斟酌なければ、後日処しがたく…。柳根(ユ・グン)の軽く申し上げる、これでいきますか! 日本の書状に対しては心苦しく述べて、また怒りをあらわにせず…。黄廷彧(ファン・ジョンウク)に命じて急ぎ制作しましょう。

李山海の、可否の無い話を延々と聞かされたあと、

奏・しま・せん。

と柳成龍がひと言。

ヒクッ!

酒に沈んでいる李楊元は、ただ人の口が頼みであった。

 

北信愛

北信愛

関白秀吉公に直ちにお伝えできないでしょうか。

北奥の南部氏二六代・信直の側近・北信愛(のぶちか)六九歳は、二本松在陣の浅野長吉を訪問した。

つまり、京より討伐軍を請う、と。

長吉が尋ねた。

畏れ多くも関白様御軍勢ほか、敵いません。

そんなまさか…

長吉の家来たちは驚きを隠せなかった。

控えよ。北殿は奥州では知らぬ者はおらぬ智勇の将。そのような方が、同じ氏族の反乱に窮迫しておられるのだ。

我等は勿論、また南部様隣国の伊達様および会津の蒲生様に加勢いただければ、京の軍勢を頼まずとも北の軍勢だけで…

いや昨年の、小田原北条氏より手強いのかもしれない。

家来たちは再びどよめきたった。

天下未だ治まらぬ前に、明を犯すなど…

明?

 

これは大事の至り。略(あらま)し、倭情と俱(とも)に通信の一款(かん)を伝えます。

東人派の金応南は、西人派の柳成龍に忠告。

成龍は黙って、奏上を託された賀節使・金応南の行を見送った。

«

ランダムデイズ