毛利秀元くんの日記:第13回 真善美

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毛利秀元戦国29年8月26日

世界は絶望的なことが絶え間なく続いているように見える。まるでそこに僕らが入り込むことを奨励しているようだ。

だから僕らはいつしか、悪びれたもの勝ちなのだと勘違いし始めた。

実際、他国に侵入して放火、強盗、人身売買など、残虐行為の限りを繰り返しても行く手を阻む者がいなかった。

ほらね、この世界に希望なんかない。人間らしく生きるよりも、計算高いものが、合目的な人間が勝つと僕らは証明したつもりでいた。

けれど、ここ忠清道・稷山(チクサン)で、日本軍は明の大砲に吹っ飛ばされた。

君の指令によって、常識が吹っ飛ばされた。

ここで負けたらソウル再侵入は絶望的だ。朝鮮再侵攻で、連戦連勝を重ねた日本軍の勢いをくじいてしまう。

だけど明軍は、南原で倒れた多くの味方の鼻が日本軍に削ぎ取られた分だけ怒りに満ちて、死ぬ気で黒田軍と毛利軍に攻め込んできた。

明と朝鮮は日本と違って、文民統制だから司令官は武官ではなく文官。剣は振るえないと思ったけれど、君は違った。

楊鎬「くたばれ、安芸宰相!」

と君は鮮やかな剣さばきで、容赦なく僕に斬り込んできて、僕は必至で刀でそれを振り切った。

常識を超える君に出逢って、忘れかけていた言葉を思い出した。

真善美。

心の強さって見えないものを信じる力なのだろうか。

僕らの信じていた絶望的な世界を、経略・楊鎬(ようこう)が希望に変えてしまったんだ――

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