後藤又兵衛くんの日記:第62回 家老死
9月4日
自由に生きているヤツってすげーよな。
オレには無理。いつだって上のいいなり。
なんだかんだその方が楽なんだろうな。
然しながら太閤から明国を制圧しろと命じられたからといって、何の疑問も持たずに朝鮮に侵攻できる神経が羨ましい。コイツに付き合っていたら、家老死するのはわかっている。
だけどもう若くないし、ダミアン(黒田長政)にクビを宣告されたら、どこに行けばいいんだろう。
去年の文禄元年四月、釜山に上陸。北上して、ソウル、平壌とダミアンに付き従い、黄道道(ファンヘド)統治のため兵を返して南下。
ダミアンは、黄海道海州(ヘジュ)を軍事拠点にして、ここを支配した。しかし、慶尚道でクァク・チュウ(郭再祐)が最初の義兵を起こすと、次第に各地でも義兵活動が活発化。
黄海道では義兵としてイ・ジョンアム(李廷馣)が決起し、先月、廷安(ヨンアン)に城を構えた。
「イ・ジョンアム、かっけー」
とオレが思わずもらすと、

李廷馣
「このコチュジャン野郎!!」
とダミアンにぶん殴られた。コチュジャン野郎って何?
「わしほど慈悲にあふれた統治者はいないというに何故なんだ!!」
家老死寸前。いや、俺はコイツの家老でもなかった。俺はコイツの何だ。許してもらわなくても、コチュジャン野郎でもいいじゃないか。自由を手にできるのなら。
よろよろと立ち上がり、見上げた先の城門にイ・ジョンアムが立っていた。
家老死するくらいなら、死ぬ気で戦って倒れたいと思った。
カテゴリ:後藤又兵衛くんの日記 | 2017-09-04 公開
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