後藤又兵衛くんの日記:第67回 大砲で貫いて


後藤又兵衛文禄元年一二月二五日

まさか他人の権力に抗(あらが)うつもり?

やめとけよ。そんな無駄な苦労。

面倒くさいこと大嫌い。

賢い俺は事なかれ主義。

ここ黄海道(朝鮮国中北部)においても、黙ってダミアンの寝言を聞いている。

明皇帝が、都督李如松を朝鮮軍務提督に任じたことも知らずに――

 

まさか一人、己の道を行くつもり?

やめてくれい。国と周りに迷惑。

禄と居があれば充分。

わきまえている俺に志などない。

ここ黄海道においても、適当にダミアンのご機嫌を取っている。

 

提督李如松が兵三万を領し、副総兵楊元を以て中協大将と為し、副総兵李如栢を左翼大将と為し、副総兵張世爵を右翼大将と為し、副総兵任自強・祖承訓・孫守廉・査大受、参将李如梅・李如梧・方時春・楊紹先・李芳春・馳尚志・葛逢夏・佟養中、遊撃呉惟忠・李寧・梁心・趙文明・高徹・施朝卿・戚金・沈惟・高昇・銭世禎・婁大有・周易・王問等の諸将がこれに属し、鴨緑江(朝鮮との国境をなす川)を渡ったことも知らずに――

 

李如松

提督 李如松

危機的状況であると言うとつもり?

神国日本が?天皇の赤子の己が?

居之不疑(ここにおりてうたがわず)

楽以忘憂(たのしみをもってうれいをわすれる)

ここ黄海道においても、ダミアンの濁声(だみごえ)が響き渡っている――

 

眩暈がしそうな数の、提督李如松の大軍が迫り来るのも知らずに、今日もダミアンと、事ここに至っても主従ごっこを繰り返すくらいなら、明のその優れた大砲でいっそ、この胸を貫いて欲しい。

なんて思ったりしない。思ったりするわけないんだ――

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