藤堂高虎くんの日記:第22回 対面


藤堂高虎文禄四年七月八日

高野山から下山し、伏見城で太閤秀吉公に対面した。

遅かったではないか。

太閤は扇子で跪(ひざまず)く私の肩を叩いた。

「申し訳けありませぬ。」

私は深々と頭を下げた。

高野山で何をしていた。

「亡き大納言様(豊臣秀長)を弔っておりました。」

いまだこれほど、我が弟を想うてくれる殊勝な者は、おぬしくらいなもの。有り難く思うぞ。

「ははっ。」

しかし、その才を捨て置いては、あの世から小一郎にわしが叱責されるであろう。兄者、何やっとりゃあ!!』」

「ププッ!」

私は思わず噴き出してしまった。

似ていたか!?

「はい。」

笑いがわかる。やはりそちを山に引き籠らせてはおけぬ。

と太閤は私の手をかしっと取った。相変わらずよくわからない…。

けれど太閤に認められる。きっと有り難いことなんだ。

私は必死でそう思おうとしていた。

 

太閤との対面を果たし、正式に伊予国を賜り晴れて大名となって、伏見城を出た矢先。

何やら物々しい武家の行列が目に入った。その中に、凛とした直垂姿の貴人がいた。

「秀保様?」

死んだはずの、先の主君の名を発した。

「秀保様!」

そんなわけない。だけど――

豊臣秀次

豊臣秀保?

「秀保様!!」

私が駆け寄ると、

高虎!?

その貴人は振り返った。

 

どうして、突然の雨。

太閤に認められる。

きっと有り難いことなんだ。

私は必死でそう思おうとしていた。

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