後藤又兵衛くんの日記:第50回 主君の為には死ねない


後藤又兵衛11月3日

昨夜、主君の吉兵衛(黒田長政)を交えて黒田家中10人くらいで飲み会があった。その席で、徳川が大坂城に総攻撃をかけるのも時間の問題だろうという話になった。

もし関ヶ原の時のようないくさが再び起ころうとも、殿の為なら、私はこの命、いつでも捨てる覚悟にございます!

と黒田家中イチ文武両道の男が吉兵衛に言い放った。嘘だろ、おい。何で吉兵衛の為なんかに死ねんだよ。

吉兵衛も吉兵衛で「わしは日本一幸せな殿じゃ!」とその言葉に感動して泣いた。

飲み会終了後。まるで悪い夢でも見たようだと、俺は黒田家の屋敷の外に出て酔いを醒ました。その時、物見櫓の方からさっきまで一緒に飲んでいた連中の声が聴こえた。

相変わらずうちのお殿様はお目出度いね。」「お陰でご機嫌を取るのが楽勝だ。ハハハッ!」そう笑ったのは、例の黒田家中イチ文武両道の男だった。

俺は思わず、こいつの胸元をつかんで顔をぶん殴った。

そして今朝。「昨夜、飲み会の後、城内で同僚を殴ったって本当か?」と吉兵衛に俺は呼び出された。「何があったか知らんが、槍働きしか芸のない人間ってホント、血の気が多くて困るよ。今日から一週間、後藤又兵衛を謹慎処分とする。

そいつを殴った理由を俺に聴かないのか、吉兵衛。知らぬが仏なんだけどさ。

せっかくの謹慎処分。書物でも読んで、槍働きしか芸がない頭でも鍛えようと思った。だけど人間には表と裏の顔があることを知らない、俺と同じように単純思考回路の吉兵衛のことばかり考えていた。主君の為には死ねないのに。俺は苦笑した。

Autumn / 秋(あき)Autumn / 秋(あき) / TANAKA Juuyoh (田中十洋)

 

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