第二部 侍韓流ドラマ

戦国デイズ – 武将たちの日記

豊臣秀吉くんの日記:第61回 検地奉行・浅野長吉の帰還


豊臣秀吉天正一八年一〇月二三日

義智(よしとし)殿、義智殿!

京の大徳寺の境内で、浅野長吉(長政)は彷徨(さまよ)い、走った。

その声に導かれるように宗義智は、

あなた様は…

長吉の前に現れた。悠々なる蒼天の下、

豊臣奉行の浅野長吉にございます。

長吉は息も絶え絶えに言った。

あなた様が!初めてお目にかかります、対馬の宋義智にございます。

秀吉公と朝鮮通信使の会見は!

未だ適いませぬ。

申し訳ございませぬ。

長吉は突如、深々と頭を下げた。

浅野様は小田原の合戦のあと、関白様の御命令によりさらに北上したと伺っておりましたが。

義智は戸惑った。

はい。奥州の葛西・大崎領の検地を一日一ヵ村の速さで行い、終えて急ぎ帰還、真っ先にここに来ました。

どうして…

通信使一行のことが、ずっと頭から離れられませんでした。

謝らねばならないのは私の方です。浅野様のご心痛など考えたこともありませんでした。浅野様が、関白様と対馬との折衝役でなければ、この度の通信使の来日は難しかったと思います。

通信使のことも奥州のことも、主君を何一つお止めすることができない私は、具臣(ぐしん)というべき――

論語ですか。

一人の僧が颯爽とやって来た。

玄蘇(げんそ)様…?

私は玄蘇にいつもぴしぴしやられていて、辛いです。

私とて具臣(頭数だけの臣)に過ぎません。

三人は笑った。

浅野長吉

浅野長吉

退屈されてはいらっしゃいませんか。

お蔭様で通信使一行ともども充実しております。今日もほら、あそこに――

真っ青な衣に黒い冠を被った一人の朝鮮通信使に、一人の男が茶碗を手に話しかけていた。

日本人が所有の朝鮮茶碗に、通信使が由来を書く。茶器として高値で売るのです。勿論通信使にしても、タダでは書きません。

あれが…

長吉の頬から涕(なみだ)が下る。

浅野さま…?!

すみません、

長吉は目を袖でぬぐった。

私は通信使に会いたかったのだと思います。

« »

ランダムデイズ