加藤清正くんの日記:第46回 アイシテイマス
8月3日
朝鮮宰相の柳成龍が暗躍し、明に援軍を要請。明・李如松軍四万が小西行長籠る平壌城を包囲した。
明の優れた大砲に耐えられず、小西軍はソウルに向かって南下、敗走した。これにより日本軍、朝鮮東北・咸鏡道に踏ん張る我が第二軍以外は全て、持ち場を放棄してソウルに集結した。
なんとも情けないことである。小西も他の連中も皆、壮健な日本男子としての自覚がない。明・朝鮮人に敗北するなど、女、同性愛者、癩、河原者、年寄りの類と違わないではないか!
咸鏡道だけは絶対に譲れない。守り切る。我が第二軍だけで咸鏡道に義兵を興した鄭文孚(チョンムンブ)を一掃してやる。
「できるわけないだろ。いい加減目を覚ませよ。」
と肥後人吉の大名・相良長毎(ながつね)一九歳が溜息をついた。
「イルボングン(日本軍)ザマアミロ!!」
朝鮮王子・順和君(スンファグン)一四歳が握り飯をほおばった。
「以前より王子にろくでもない日本語を教えてるのは貴様かッ!」
「コニシユキナガヲ、アイシテイマス。」
順和君の兄・臨海君(イムヘグン)二二歳が笑みを浮かべた。
「相良長毎――ッ!!」
わしが刀を抜こうとした瞬間、
「ただの子供の戯言です。」
と鍋島直茂殿に制止された。
「本当のことだろ?」
と相良がマッコリを仰いだ。
わしは言葉を失った。
カテゴリ:加藤清正くんの日記 | 2018-08-03 公開
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