真田幸村くんの日記:第50回 秀頼後見・片桐且元
6月23日
豊臣秀頼様はこの度、地震で倒壊していた太閤の方広寺を再建した。
豊臣を潰したい徳川は、同寺の鐘に刻まれた文字が家康を呪って豊臣の隆盛を願っている、というイチャモンをつけて豊臣を挑発してきた。
これを受けて大坂城で本日、徳川を倒す為の作戦会議が開かれた。
浪人である盛親先生と私も許され会議に出席したのだが、「これ以上徳川の横暴を許すな!」とか「徳川を討って華々しく散るべし!」とか、場内は異常に殺気立っていた。そんな時、
「黙らっしゃい!」
と秀頼様後見の片桐且元殿が諸将らを一喝し、
「いくさをして豊臣が負けたらどうなりますか?」
と一石を投じた。
「何を弱気なことを申される。」
と大野治長殿が驚きを込めて言った。
「例え負けたとて、いくさ場で倒れることこそ武門の誉れでありましょう。」
と木村重成くんが微笑した。
「冗談じゃない。避けられるべきいくさは避け、生き残る道を模索することこそ、豊家に対しての真の忠義。方々は後先考えずに、単に徳川と戦争がしたいだけであろう。
未来のない者を死んだ者という。そんな方々が徳川を倒せるだろうか?もう一度、冷静になって考えてみよ。」
私は頭をガツンと殴られた気がした。
確かに私は大坂入城以来、武将としてどう討死すべきか、しか考えていなかった。だけどこれが私の本心だろうか?
会議のあと、私は盛親先生の背中に向かって、
「先生!私はできるなら、もっと生きたいです!」
と叫ぶと、先生は振り返って、
「当たり前だろ!俺たちはまだ、生きているんだから。」
と言って、笑顔を見せた。
且元殿の言葉が思いがけず、先生と私の基本的な感情を呼び覚ましてくれたのだった。
カテゴリ:真田幸村くんの日記 | 2015-06-23 公開
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