藤原惺窩くんの日記:第18回 朋有り、遠方より来る


藤原惺窩戦国30年7月24日

明遊学に失敗して播磨に帰って来て間もなくのこと。若狭小浜城主・木下勝俊様が私を訪ねてくださったので、我があばら家周辺を勝俊様と散策、木陰で腰下した。

惺窩先生に聞いたいことがあるのですが…

と勝俊様は荷物を下してを書物を開いた。

お恥ずかしながら、これはどうのように読んだら宜しいですか。

それは『論語』学而篇の一節”無友不如己者”。

「己(おのれ)にしかざる者(もの)を友(とも)とする無(な)かれ」

嗚呼、友無しじゃなくて、なかれか!

「自分にそぐわない者を友とするな、という意味です。」

と私は答えた。

ありがとうございます。

勝俊様は私の言ったことを紙に書き留めた。

「失礼ながら、何故論語を読んでおられるのです?」

先生が何故、儒にこだわっているのか気になって…

「え、そうだったのですか!」

先生は何故、禅僧からわざわざ儒者になられたのです?

「朋(とも)有り。」

木下勝俊

木下勝俊

遠方より来る。

「また楽しからずや(学而篇)。――なんて、論語の一節を誰かと共有できることも単純に楽しいですしね。これを好む者は、」

これを楽しむにしかず(雍也篇)。って、さりげなく試験しないでください!

「我が国には科挙もないし?」

勝俊様と私は笑った。

私はやっぱり先生が――

秋の訪れを知らせる風が通り抜けた。

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