李舜臣くんの日記:第21回 完璧ではなくて
8月17日
来るべき日本軍侵攻に対し、東海岸の慶尚右水営と連携して、我が国の民や兵の被害を最小にとどめたい。
先日、私自ら慶尚右水営を訪ね、右水使・元均(ウォン・ギュン)に我が左水営との連携を持ちかけたが断られた。しかし諦めている場合ではない。
そこで元均と比較的気が合いそうな部下の鄭運(チョン・ウン)を使いにやってみたが、酔っぱらって帰ってきた。
「申し訳ありません、右水使が用意していた妓生二人に散々呑まされて…」
「……」
私は言葉を失った。次に部下の権俊(クォン・ジュン)を使いにやったが、顔に大きなアザを作って帰ってきた。
「申し訳ありません、我が水営との連携は絶対であること、右水使に再三諭しましたが、倭を恐れすぎだ!と殴られました。」
「……」
私は絶句した。
夕暮れ、左水営に左議政(副首相)・柳成龍(ユ・ソンリョン)様から文が届いた。

柳成龍「笑うしかないね。」
「舜臣、元気でやっているか。朝廷では今、党争が激化している。
右議政(副首相)尹斗寿(ユ・ドウス)が、国王にお世継ぎのことを持ち掛けたので、対派閥の私共もそれに対抗すべく策を弄すばかり。これだから朝廷では倭の侵攻に対する防衛が全く整わない。
舜臣が日々海岸防衛に心を砕いている中、朝廷のこの惨状、まことに情けなく申し訳ない限りである。」
柳様。私も似たようなものです。尹斗寿と同派閥の元均に手をこまねいてばかりです。
私と同じく柳様がしょうもないことに振り回されていて、ほっとしました。柳様も完璧ではなくて――
そう苦笑して私は、左水営の高台から遠く海を眺めた。
カテゴリ:李舜臣くんの日記 | 2018-08-17 公開
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