後藤又兵衛くんの日記:第65回 最後の希望のように


後藤又兵衛8月23日

黒田軍は黄海道海州(ヘジュ)を軍事拠点に、黄海道を統治していた。

しかし昨日八月二二日、李廷馣(イ・ジョンアム)ら朝鮮軍と戦闘となって、前回記事にした通り俺は、果敢にも黒田軍本陣に斬り込んできた降倭・沙也可の刀を振り切っていた。

黒田軍は奮戦空しく敗戦。海州を放棄し白川(ペクチョン)に移った。この度の戦闘で多くの仲間の兵を失った黒田軍は戦意喪失。ではなく朝鮮軍への憎悪に燃えていた。

我等が英霊たちのため、必ず仇を取るぞ、エイエイオーーッ!

主君のダミアン(黒田長政)の雄叫びが白川の星空に鳴り響くと、

オオーーッ!!

と家臣らもそれに応えて、酒をあおった。

「もうやめませんか?」

と俺はダミアンの背後から声をかけた。

「私には大義が見えません。」

皆が一つになっている所に何故貴様は水を刺しやがる!

「皆が一つになるってのが気持ちがわるいと言っているんです。」

このキムチ野郎!

沙也可

沙也可

とダミアンは俺をぶん殴った。

口が切れたので、俺は一人川で口を注いだ。すると後ろから仲間の何人かがやって来た。心配して来てくれたのかと思って自分から「俺は大丈夫だ」だなんて随分間抜けなことを言ったものだ。

仲間たちは、「オレの弟が朝鮮軍に殺されたんだ!」「朝鮮軍のせいで私は右腕を失ったのだ!」とかいって、俺の腹を何度も蹴った。

遠のく意識の中で、俺は沙也可が落とした髪飾りを手に握りしめていた。最後の希望のように。

日本人のままで格好良く生きることはかなわいのだろうか。空気が読めなくてもいい。情けなくてもいい。キムチ野郎でも構わない。俺は日本人を、俺自身をまだ諦めたくはなかった。

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