加藤清正くんの日記:第26回 「隣りだから。」


加藤清正戦国23年1月24日

いつからだろう。豊臣政権にとって、武功派のわしが、いてもいなくても、どうでもいい存在になってしまったのは。

太閤殿下から、ここ肥後国を与えられたことは、とても喜ばしいことである。けれど物理的だけでなく、心理的にもどんどん大坂城が遠くなってゆく。自分が誰とでも交換可能な存在になってゆく。

そして今夜もまた眠れない。そんな夜更けに、熊本城の門を強く叩く音が聞こえた。門を開けると、隣り近所の小西行長が立っていた。小西はわしに酒を渡すと「おまえ、眠れないのか。」と言った。「は?」

おまえの屋敷、こんな夜更けになってもまだ赤々と明りがついていたから。眠れるまで、たまには酒くらい、付き合ってやってもいいぞ。

「その為におまえは宇土城からわざわざうちにやって来たのか。」「隣りだから。」「それだけの理由で?」「充分すぎる理由だろう。

小西、おまえは酒なんかほとんど飲めないのに、どう付き合ってくれるんだ。馬鹿だろう。けれど、わしが誰とも交換不可能な存在として、色と重みを持って今また、よみがえるような気がしたのは何故だろう。

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