第二部 侍韓流ドラマ

戦国デイズ – 武将たちの日記

豊臣秀吉くんの日記:第89回 盟友未満


豊臣秀吉天正一九年六月二日

上洛後、伊達政宗二五歳は五月二一日に米沢に帰還。

颯爽と屋敷の廊下を渡り、客間に入ると一人の侍が控えていた。

お久しゅうございます。

豊臣筆頭奉行で二本松在陣中の浅野長吉(ながよし)四五歳は、ひれ伏して礼をとった。

まんず、正月ぶりべか。

政宗は腰を下ろし、持参の包みを横に置いた。

京よりご無事のご帰還、珍重に存じます。

顔も上げずに、ご無事も何もないべ。

政宗はため息をつき、長吉は顔を上げると、

申し訳ございません!

と再び頭を下げた。

何が。

ご加増とはいえ、ここ米沢の本領から岩出山に移るられると。

何のために首さはねられる覚悟で上洛し秀吉公に申し披(ひら)ぎしだのか。

政宗は再びため息をついた。

私は政宗殿のご助命を願って、日々神仏に祈っておりました。

あっそう。京では石田三成が圧倒しで、長吉殿の居所はどこにもないべ。

人生根蔕(こんてい:根もと)無く、

飄(ひょう)として陌上(はくじょう/風にひるがえって路上に舞う)の塵のごとく、陸奥にあって、おらに聞きたいことはねえべか。

例えば…

大和大納言(秀長)、利休居士(こじ)の最期以外に何か?

筆と水滴

筆と水滴

そうですね、そう…

長吉が戸惑っていると、政宗は包みを開いて見せた。

これは藤堂高虎殿から長吉殿にと預かった、大納言愛用の筆。

思いもよらぬこと…

こぢらは生前、利休様より我が身万一あれば長吉殿にと託されだ、朝鮮の水滴(すいてき:硯に水を注ぐ小さい器)。

なぜ私に…

二人の形見を前に、長吉は涙をこらえることができなかった。

さあ。

政宗は立ち上がった。

政宗殿!

閾(しきい)を前に政宗は足を止めた。

間もなぐ京より豊臣の大討伐軍さ、押し寄せで来る。

長吉、身命落として、この地をお守り致します。

長吉は涙をぬぐって、政宗の背に向かって言った。

どちら側としてだか。

笑みを浮かべた政宗は、振り返らずに立ち去った。

«

ランダムデイズ