第二部 侍韓流ドラマ

戦国デイズ – 武将たちの日記

豊臣秀吉くんの日記:第72回 伯楽


豊臣秀吉天正一九年一月二〇日

利休さまのご息女が自死された――!?

大和郡山城で、藤堂高虎三六歳は言葉を失った。

なにゆえ…

わかりませぬ。京にて、たまたま耳にした噂にございます…

我が弟・小一郎(秀長)の臣の者は、そう答えた。

本当に自死なのだろうか。殿のご病気にしても、一時期かなり回復されたのに…

ご家老、考えすぎでは。

もしかしたら、我れらの殿より先に利休さまが先に――

そんなまさか!

 

奥州はどうなっておる…

同城において、床に臥せている小一郎五二歳。

お体に差し障りございます、政(まつりごと)など…

側に一人坐す、高虎は困惑した。

それができたら…

暮れに、徳川家康殿から殿宛てに書状がございました。奥州のご様子、伊達政宗殿が浅野長吉殿の陣所に参会し、万事静謐に帰した、とごさいました。

そなた、信じるか。

いえ。

二人は微かに笑みを浮かべた。

家康殿は…重篤のわしを…安心させたかったのだろう…

旭姫さまについても、述べられていました。

まさか…

盛大な婚姻の式から、幸せにできなかったまま、一周忌と。

百姓あがりの…我等兄弟と違い…妹の旭は美しく…品もあって…

嘘でしょ!――いえ、申し訳ございません!!

ゴホッ!ゴホ、ゴホッ!!

殿!

高虎が慌てて背中をさすった。

大丈夫、おかしかっただけだ…

秀長は高虎の手を握った。

藤堂高虎

藤堂高虎

兄者(あにじゃ)と利休と違い…凡庸なわしが…唯一誇れること…

それは?

そなたを見つけ…取り立てたこと…

未だ大した働きもしておりませぬのに…

わしが死んだら…そうもいくまい…

高虎は首を横に振った。

それだけは、どうか、どうか…。私が、日本が、崩れてしまいます。

志士は、溝壑(こうがく:谷間)に在るを忘れず…

勇士は、其の元(こうべ:首)を喪うを忘れず。

正(まさ)に、わしの目に狂いは……

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