第二部 侍韓流ドラマ

戦国デイズ – 武将たちの日記

豊臣秀吉くんの日記:第69回 妹の旭


豊臣秀吉天正一八年一二月五日

おちゅる!

わしは電光石火で、聚楽邸から淀城に駆け付けた。

どうなされました、殿下。

妻の淀は、二歳になるわが子と毬で遊んでいた。

「昨夜、おちゅるが病を患った夢を見たのじゃ。」

鶴松ならこの通り。

「そおか、そおか。」

わしは走り回る鶴松をつかまえて、抱きかかえた。

「今朝、京の神社仏閣に祈祷を命じたが、取り越し苦労であったか。」

殿下の信仰心が、神仏に届いたのでしょう。

 

バチがあたったのかもしれない…

京の三十三間堂の北側。

わしはこの地に大仏を建立するよう命じ、基壇(きだん)である礎が築かれ、せわしなく作事が続いていた。

その隅で、丸木に腰掛けていた小一郎(秀長)が、

豊臣にわしの居所(いどころ)がないのだ。

と、深く息を吐いた。

あなた様は大和大納言にして、秀吉公唯一の弟君。そのようなことがありましょうか。

その隣に腰かけていた利休が尋ねた。

今年前半の小田原征伐で、豊臣の主たる将はみな出陣。天下統一の、最後の総力戦に、わしだけが床に臥せていた始末。

「豊臣にはこのように、まだまだすべきことがございます。」

利休は、次々に巨木を運びこむ大勢の姿に手を差し向けた。

旭姫

旭姫

そう、天下統一後も果てしなく続く苦役を止める力が私にはもうない。今年のはじめ、妹の旭(あさひ)にすら、何もしてやれなず、死なせてしまった。

小一郎は右手で顔を覆った。

秀長様のせいではありません。

旭は夫がいたのに、家康殿との政略結婚で無理やり離婚させられ、後に気うつになって……

秀吉公の妹君でもあられます。

兄者(あにじゃ)は、妹も弟も関係ない。年老いてからの待望の子・鶴松にしか興味がない。

それならば私も蚊帳の外、ということですか。

そなたをここに縛っているのは、兄者ではなくむしろ私だ。

いいえ、私は己の意志でここにいるのです。断固としてここから動きません。

まるで大仏だ。

黄昏の平らかに広がる雲の下、ようやく二人の顔に笑みが浮かんだ。

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