上杉景勝くんの日記:第45回 五大老との初めての出逢い
5月18日
五大老だった小早川隆景殿が隠居され、その後任としてわしは五大老に就任した。
先輩五大老の家康殿、利家殿、輝元殿、秀家殿が、大坂城の近くの寺で、わしの為に新入歓迎会をひらいてくれた時のことはよく覚えている。
それは今日のように、空も緑も青々として爽やかな日だった。
「景勝殿、五大老就任おめでとう。」と利家殿がわしの杯に酒を注いでくれた。
「実直な景勝殿が五大老に就任されたことは豊臣や我らにとって喜ばしいことです。」と輝元殿が抱えきれない程の花束をくれた。
「それでは景勝殿、五大老就任の意気込みを。」と家康殿がエアマイクを握った手をわしに差し向けた。
「・・・・・・・・・・・。」
わしは顔を赤らめ黙っていた。
「緊張しておるのか?」「意外に恥ずかしがり屋なんですね。」
「短い付き合いになると思いますが、よろしく、乾杯。」
と秀家殿が一人で先にぐぐっと酒を飲んだ。
「短い付き合いってどういう意味ですか?秀家殿。」
「文禄の役が終わった昨今ですが、近いうちにまた殿下から朝鮮出兵の命が下されることでしょう。さすれば、恐らく私はまた朝鮮へ渡海せねばなりません。」
「それもそうだね。いってらっしゃ~い、秀家殿。お元気で!」
「はあ?!次は家康殿だって渡海すべきだ!」
と秀家殿は憤慨して、そこにあった円座を家康殿に向かって投げた。
「暴力、いけないと思いまーす!」
と家康殿も円座を秀家殿に向かって投げた。
「痛ッ!マジで投げましたね!」
そして二人の円座投げ合い合戦が始まり、
「まったくこの二人はまた…」
と輝元が溜息をついた時、ガンッ!わしのおでこに飛んできた円座が当たった。
「大丈夫ですか!?景勝殿!」
「景勝殿、ここもまた戦場じゃ。しかし生ぬるい人間関係でも物足りなかろう。」
と利家殿に言われたわしはこくりと頷き、円座投げ合い合戦に参戦する為に立ち上がった。
しかしこの時、わしはまだ知るよしもなかった。
再度の朝鮮出兵により、本当にここにいる五大老が五人揃って居合わせることができたのは、だかだか1、2年の短い間になることを――
カテゴリ:上杉景勝くんの日記 | 2015-05-19 公開
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