毛利秀元くんの日記:第18回 脱走
9月22日
朝鮮再出兵となり日本軍は、首都漢城(ソウル)侵入を目指して北上。しかし忠清道・稷山で明本隊である経略楊鎬軍の迎撃を受けて、多くの犠牲者を出した。
作戦変更を余儀なくされ、釜山日本本営で諸将らと今後を話し合った。大まかに言うと、朝鮮南海岸に多くの倭城を築城して進軍せずに倭城に籠ることとなった。
軍議を終えると、
「総帥殿は両班の娘一人を囲っているとか?」
と加藤清正が僕の肩に腕を引っかけてきた。
「マジで?総帥殿と言っても普通の男だったか。このこの~!」
と黒田長政が肘で僕の胸を付いてきた。
「このくらいの年の頃が最も盛んだからな!」
「一緒にしないでください。」
僕はベタベタ触ってくる彼らを振り払って、その場を去った。
嗚呼、死にたくなってくる。廊下の壁に額を当て絶望していると、
「殿!」
と家臣が慌てて駆け寄って来た。
「申訳ございません、殿の部屋におりました両班の娘がいなくなりました!」
「は?」
名も知らない彼女が僕の部屋に来て以来、僕は自分の部屋を避けた。久しぶりに戻った部屋。僕のうさ太の目が三白眼になっていた。彼女が落書きしたのだろうか…
もうすぐ日が沈む。外は日本の雑兵が散在していて一人で逃げるのは危険だ。
「探せ、彼女を探すんだ!」
今までにない処罰をもって、
「取り逃がしたら首がないと思え!」
と家臣に命じた。
「直ちに女を探せ!」
と家臣はそのまた家臣らに命じた。
僕は僕で本営の外に飛び出し当てもなく探した。
呼吸をするのを忘れるくらいに彼女を――
カテゴリ:毛利秀元くんの日記 | 2018-09-23 公開
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