藤原惺窩くんの日記:第9回 明に恋して舵(かじ)を絶え


藤原惺窩戦国28年11月9日

明への遊学を企てた私は、山川津(薩摩半島東南端の港)に到った。そして、ようやく出帆した明行きの船に揺られながら、私はふと百人一首の中の一句を思い出した。

由良(ゆら)のとを 渡る舟人 かぢをたえ 行(ゆ)くへも知らぬ 恋の道かな(曾禰好忠)

目標に最短距離で進まんと、舵(かじ)を手放すことができない人間は、きっと恋なんてできないんだろうな。

私がいまだ独り身なのも元禅僧だったからというより、ここに理由があるのかもしれない。そんなことを真剣に考えていた時、突風が吹き付け、

ザッバ――ン!!

船内に大量に海水が入った。船頭殿の指示で、乗客総出で船内の海水を捨てに捨てた。と思ったら、再び突風が吹き付け、

ザッバ――ン!!

出帆前、「長年の勘で今日は一日中晴天だから。」と笑顔で語った船頭殿の顔が脳裏に蘇った。その瞬間、今度は船が大きく傾き、私は船の最後尾まで転がって頭を打った。

 

惺窩とだったら、この天空の城から日本を変えられるかもしれない。

広通様(但馬竹田城主)…

恋する人のように先生を日本で待っています。

勝俊様(北政所の甥で歌人)…

 

気づけば船は無人島らしき孤島に漂着。

先生、すみません。船が破損して当面、日本本土に戻ることもできません。

赤松広通と木下勝俊

赤松広通と木下勝俊

と船頭殿が頭をかいた。

「当面ってどのくらいですか?」

と尋ねると、

さあ。本土に連絡も取れませんし、逆に先生のお智恵をお借りしたいのですが。

・・・・・・。

この状況は人智で解決できるものじゃないような…

これがゆくへも知らぬ恋の道というものなのでしょうか?

広通様、勝俊様――

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