明智光秀くんの日記:第42回 かわいそうな人


明智光秀10月2日

数ヶ月前、織田家老臣の柴田勝家様が長島一向一揆との戦いでひどい傷を負った。

柴田様は治療に専念し、先日やっと織田家に復帰された。その快気祝いとして秀吉が飲み会を企画した。皆こぞって参加するようであったが私は断った。自分の貴重な時間を割いて、秀吉のいつものゴマすりに付き合う筋合いはなかった。

安土城の庭先で、私の友人である細川藤孝は「例え秀吉がゴマすりでも、おまえは権六様の復帰を祝ってやらないのか。」と私に言った。

時々お前見ていて思うよ。かわいそうな人だなって。」「は?」「仕事は秀吉と同じくらい完璧。けれど皆おまえじゃなくて秀吉を選ぶ気持ちがわかる気がする。

そう言って細川が私から去った。その後、私は安土城の廊下で白と黄色の水仙の花を握りしめ、床に強く叩きつけた。「ふざけんな!」

何、カッカしてんだよ。本当にかわいそうな人だな。」気付けば松永久秀殿がそこに立っていた。「先程の細川と私の話、聴いていたのですか。」「声でけーんだもん。

「趣味がわるい。」「何でもいいけど、秀吉に負けている自分をそろそろ許してやれば?」「私が秀吉に負けてると?」「負けてんだろ。」「何であなたにそんなことを、」と私が言葉を詰まらせると、「俺様も信長に負けっぱなしだからな。」と松永殿は笑った。

柴田様に贈ろうと思って、今朝、坂本城の庭から摘み取ってきた水仙が、私の足元で横たわっていた。私の目から涙が落ちた。松永殿の言葉で私は、秀吉に腹を立てていたのではなく、秀吉に負けている自分に腹を立てていたことにやっと気付いた。

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