藤堂高虎くんの日記:第23回 すれ違うように


藤堂高虎文禄四年七月八日

朝鮮とは一応、休戦中である。だけど、一体どんな状態が戦時下であり戦前であるのだろう。

文より筋肉が尊ばれている。

間違っていることに気付かないフリして過剰適応している。

あるいは、もっと単純に――

 

「秀保様!!」

私が駆け寄ると、

高虎!?

その貴人は振り返った

秀次殿、お急ぎあれ。

秀次殿?伏見城外。私に歩み寄らんとする関白を伴の者が制止した。

弟の秀保とは一〇も違うが。

「これは勘違い、お許しください、関白様。」

私はその場で平服した。

高虎はしっかりしているようで、結構ズレている。と生前、秀保は言っていた。

関白秀次様は笑った。

「お恥ずかしながら…」

私は頭をかいた。

しかし私は既に関白にあらず。

「え?」

先ほど太閤より関白の職を解かれ、これより高野山に登る。

先を急ぐ。下がれ。

関白の伴の者が私に刀を向けた。

この者は高野山より下山し、このたび太閤より伊予国を賜った大名、藤堂高虎公である。

「何故それを…」

伴の者は、刀を収めて一歩下がった。

太閤は、秀保をよく補佐していたそちのことを高く買われていた。これより以後、私の代わりに太閤を頼んだ。

「どうして関白様が高野山へ?」

豊臣秀次

豊臣秀次

それは私が聞きたい。然しながら、最後に弟のことを思ってくれていた者に会えたことは幸いであった。

 

朝鮮とは一応、休戦中である。だけど、一体どんな状態が戦時下であり戦前であるのだろう。

文より筋肉が尊ばれる。

間違っていることに気付かないフリして過剰適応している。

あるいは、もっと単純に、この国は目に見える暴力に満ち溢れている――

私とすれ違うように高野山を目指す関白様。関白様が見えなくなるまで、雨の中、私は一人立ち尽くしていた。

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