毛利秀元くんの日記:第22回 本当の君 嘘の僕


毛利秀元慶長二年一一月八日

うさ太!

釜山日本本営にて加藤清正が唐突に僕の肩に腕をかけてきた。

囲ってた朝鮮の娘に逃げられたんだってえ~!

横から黒田長政も絡んできた。

うさ太が普通の男で安心した。

隅におけない青年総帥、このこの~!!

「一緒にしないでください!」

 

若くて童顔なのに豊満でいまだ男を知らず、孝行者で、ツンデレで、学がないわけではないが自分で思考することがなく、釘を刺すにも刺しようがない従順な女、というのは朝鮮にはいそうでいなかったのです。

そうやって萱島元規(かやしま-もとのり)は、勝手に僕の部屋に知らない娘―ソヨンを連れてきて、風のようにソヨンと共に釜山日本本営を去った。

本営内郭の小高い丘の上に立って、僕は今日も風に揺れるススキを眺めていた――

 

「こうしてススキを眺めていると、僕はただ自然を観察するために生まれてきた気がする。毛利のためとか、日本のためとか、太閤のためとか、そんなことどうでもよくて――」

は?

僕の側近く仕えて間もない萱島元規はきょとんとしていた。

「ごめん、何言っているんだろ。聞かなかったことにして。」

無為にして治(おさ)まる者、それ舜(しゅん)か。(何もしないで天下を治めた者は、あの(中国の伝説の聖天子)舜だろうか。)

「論語?読むのか?」

まさか。朝鮮人でもあるまいし。

思えば君は嘘ばっかり。

「舜は李舜臣であっても、僕ではないだろ。」

そんなこと、日本右軍総帥が言ってもいいのですか。

萱島元規

降倭・萱島元規

人の生(い)くるや直(なほ)し。

論語、読まれるのですね。

まさか。朝鮮人でもあるまいし。

君と僕は笑った。

 

萱島元規と一緒だったら、もしかしてこのいくさ、乗り越えられるような気がした。

束の間の主従。思えば君は最初から最後まで正直だった。

僕は今日も、ただ風に揺れるススキを眺めることしかできない。

できなかった――

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