藤堂高虎くんの日記:第21回 希望をぶっ飛ばして
3月17日
太閤から伊予国を与えてやると言われている。
なんという光栄。流石藤堂高虎。おまえもこれで晴れて大名だ。
なんて素直に喜ぶほどバカじゃない。
かの地は水軍の国。即ちもう一ペン、水軍将として朝鮮水軍と戦ってこい、ということだ。
朝鮮水軍司令官・李舜臣と戦ってこい――と。
私の答えはとっくに決まっている。
だけど、素直に首を縦に振るほどバカじゃない。
太閤に取って、都合のいい人間になろうとしている。
再び隣国に行って、耳だの鼻だの斬ってくるのは人として許されるべきではないし、私だって善人として生きたい。
だけどもう一度、君に挑みたいという気持ちが日に日に増して、耐えられないくらい。
ここ高野山にいれば、誰も傷つけることもない。自分が傷つくこともない。ましてや死ぬこともないんだ。
だけどもう一度、君に挑みたいという気持ちが日に日に増して、耐えられないくらい。
退屈したくないの。希望なんてぶっ飛ばすくらい。
きっと日本一バカな侍。正当化できない。
勝利したことのない人間に挑もうとしている。だけど勝利したことがないから君に魅かれていく。
こんな気持ち、他の日本人には言えやしない。
反転して国賊。正当化できない。
今、君は、同僚の嫉妬を買い、朝鮮朝廷によって牢に繋がれていると聴いている。
再び渡海したとしても、君と再び対戦できる保証がない。
私はただの盗賊として異国の地で死んでしまうかもしれないし、ただの人殺しとして帰国してしまうかもしれない。
それでも一縷(いちる)の望みにかけて――
秀長様、お許しください。
誰よりも朝鮮出兵に反対していた。
まだ間に合うだろうか。
京・伏見城にて太閤と対面した。
李舜臣にもう一度、出逢えるなら、希望なんてぶっ飛ばしてもいいくらい――
カテゴリ:藤堂高虎くんの日記 | 2019-03-17 公開
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