藤堂高虎くんの日記:第2回 豊臣秀長のいない世界


藤堂高虎戦国27年9月23日

私の率いる水軍は先日、朝鮮南海岸の巨済島・玉浦(オクポ)で、朝鮮水軍司令官・李舜臣(イ・スンシン)率いる水軍に撃破された。

連戦連勝していた日本軍最初の敗戦。

釜山(プサン)日本本陣に於いて私は、朝鮮人に負けるなんてアリエナイと日本の諸将らのいい笑い者になっていた。

 

私の主君・豊臣秀長様は、朝鮮侵攻を目論む兄の豊臣秀吉様を制止していた数少ない存在だった。

しかし一年前に病死されて、朝鮮侵攻が一気に現実のものとなった。

文武両道で、敵味方関係なく皆から慕われていた。秀吉様も秀長様の補佐なくしては、天下統一をあれだけ円滑に成し遂げることはなかっただろう。秀長様のいない日本なんて考えられない。

日本が壊れゆく瞬間。

高虎よ。

と秀長様は床に伏したまま私に語りかけた。

そなたの才能や勇気は、不安や危機なくしては決して目覚めることはない。

私の死をきっかけに限界状況を経験せよ。

私は所詮、太閤の弟。それ以上でもそれ以下でもない。志の大きい人間には、限界状況の中でしか出逢えない。私以上の人間がきっとそなたを待っている…

 

豊臣秀長

豊臣秀長

秀長様。

それが李舜臣とでも言うのでしょうか?

誰よりも朝鮮侵攻に反対していたあなた。そのあなたの筆頭家老が、皮肉にも日本軍初の敗戦武将に輝いた。

秀長様。

朝鮮人に負けるなんてアリエナイと、あなたも私を笑うのでしょうか?

いいえ、あなたはきっと別の意味で笑い飛ばしてくれるのでしょう。

あなたを忘れられないまま、李舜臣に出逢ってしまったなんてまさか、それこそアリエナイことで、

秀長様――

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