藤堂高虎くんの日記:第8回 キューピッド


藤堂高虎9月5日

太閤の命で日本の大軍が朝鮮に侵攻して約半年。

日本水軍は、全羅左水使(チョルラサスサ)・李舜臣率いる朝鮮水軍に連戦連敗。

陸において緒戦は日本軍優勢だったが、各地で義兵が起こると次第に劣勢に陥った。更に明が朝鮮に援軍を派遣。

大義のない戦争をしかけた側は、逆境に滅法弱いらしく、今月に入り日本は明と五〇日間の停戦協定を締結した。

 

これで私はもう、左水使様と戦えなくなるのだろうか?

喜ばしいことじゃないか。これ以上艦隊や部下を失いたくない。

だけど左水使様は納得いなかないだろう。首都ソウルは日本軍に制圧されたまま。

左水使様と私ってこんな終わり?とトッポギを炒めていた時、ド――ンと大砲の爆発音が轟いた。

ご注進申し上げます、全羅左水使の艦隊がここ釜山浦に現れました!

と私の家臣が報告すると、私の隣りでトッポギを食べていた脇坂安治が、

停戦期間中ではないかッ!

と憤激した。

あくまで日本と明の停戦で、朝鮮水軍には関係ない。ってことなのでしょう…

と加藤嘉明殿が天を仰いだ。

日本の本営を突いて来るとはいい度胸だ。全力で迎撃せよ!

と九鬼嘉隆隊長が私たちに命を下した。

「そうこなくっちゃ!」

と私は部下と共に急ぎ艦隊に乗り込んだ。

李舜臣

李舜臣

 

敵(かたき)役でもいい。

私を恐怖のどん底に突き落とす左水使様と、ずっとずっと戦っていたい。

寝ても覚めてもあなたのことばかり。

キューピッドじゃないけれど、大将船で指揮するあなたの心臓にしっかりと狙いを定めて、矢を放った瞬間――

大義のない戦争が遊びに変わる奇跡を、バカみたいに信じていたんだ。

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