小西行長くんの日記:第57回 男
月11月22日
初めからサムライだった人間には負けなくないよ。
太閤から日本軍先鋒を仰せ付かった光栄。
今年四月、朝鮮へ侵攻。釜山から破竹の勢いで北上し、僅か半月で首都ソウル・漢城制圧。
漢城(ハンソン)の関門の上から、後続の黒田長政、島津義弘、小早川隆景らの部隊を見下ろした。
漢城の宮殿の廊下で第二隊の加藤清正と無言ですれ違った。
どういわけか肩書がなきゃ生きていけないよ。男は。
漢城から更に北上して、六月、平安道の平壌城も落して、先鋒隊はここに留まった。
翌月、朝鮮を救うべく明の援軍が到着し、平壌城を攻撃。
先鋒隊のメンツにかけて応戦、なんとか城を死守した。
涙なんて見せられないよ。男だから。
小早川は全羅道侵入に失敗し、八月に黄海道の黒田が義兵に敗れた。
平安道はまだまだ大丈夫。咸鏡道の加藤清正がくたばるまでは決して――
その実、女のことしか考えてないよ。男なんて。
九月、明の外交家・沈惟敬と五〇日の停戦締結を結んだ。
これが彼の罠とは知らず、明の再援を回避できたと胸をなで下ろした。

清正・長政・隆景・義弘
競争から降りることは許されないよ。男なら。
それにしても一体誰と戦っているのだろう。
明軍?朝鮮軍?味方のはずの日本軍?
競い合い続けているうちに、全員敵になっている。
本音なんて吐けないよ。男なんて割に合わないなんて。
明の再援を前にして、男は、男だから、男なんて、男なら、そんな呪縛から解かれてたいだなんて、今更どうかしているんだ――
カテゴリ:小西行長くんの日記 | 2016-11-23 公開
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