大谷吉継くんの日記:第28回 刀狩と流し雛
3月3日
関白秀吉様の刀狩令が発布されて二年。
反豊臣の一揆の解体を進めていた上杉景勝軍は、出羽の仙北(秋田県横手地方)で、一揆方の武器を没収していた。
出羽奉行で上杉軍を監察する立場にいた私は現地で、これらの武具の引き渡しを受けた。
「没収した刀は949腰かあ。これでは少なすぎます、景勝殿。」
と私はため息をついた。
「・・・・・・・・。」
景勝殿が青ざめていると、
「大谷様、我ら上杉が没収した刀は2799腰ですが。」
と景勝殿の側近のかねたん(直江兼続)が反論した。
「そのうちの1850腰は、使い物にならない壊れた刀・脇差です。」
「我らは一揆の武装解除が目的で、刀狩令の兵農分離政策に付き合っているゆとりはないのです。」
とかねたんは私に金の入った巾着をこっそり渡そうとした。
「賄賂なんて受け取れません。」
「では仕方ない。まこと悔しいですが亡き謙信公の頭巾を差し上げましょう。」
「もっといりません。」
「お気は確かか!」
すると景勝殿が突然、自分で作ったという流し雛を私に差し出した。
「ほっこり~」
「で、流し雛もらって、僅かな刀の没収で大坂に帰って来たとは。」
大坂城の廊下で石田三成は私に絶句した。
「秀吉様に一緒に怒られてくれるよね?」
「なんで。」
「冗談ですう、一人で怒られますう~」
「だけど確かにその流し雛、ほっこりだね。」
三成は私の手にしている流し雛を見つめ、笑っていた。
私は、久しぶりに三成の笑顔を見た気がした。
カテゴリ:大谷吉継くんの日記 | 2015-03-03 公開
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