小西行長くんの日記:第64回 正義の味方
2月24日
年明け、小西軍籠る平壌城が明・李如松の大軍に攻撃された。
小西軍は首都・漢城(ソウル)まで敗走。これを追うように李如松軍も平壌から漢城に向けて南下。これにより、漢城に集結していた日本軍が危機に陥った――
李如松軍を迎撃するため、漢城の日本軍は作戦を立て、先鋒は立花宗茂・小早川隆景と決まった。小西軍は平壌の戦いでの消耗激しいこともあり、戦闘から外された。
「ここは我等にお任せあれ。小西殿はゆっくり休んでくだされ。」
小早川隆景はそう言ってくれた。
「漢城在住の朝鮮人は明軍に内応する恐れがあります。我が軍が朝鮮人の男子を殺しておきましょう。」
私はそう答えた。
私は今、家臣の内藤如安、娘婿殿の宗義智、外交僧の景轍玄蘇と漢城郊外にいる。ただ外の空気が吸いたかった。都周辺の文物を見てみたかった。漢城在住の男子殺しというのは単なる口実、出任せだった。
城外に出てみれば、朝鮮朝廷により、私と玄蘇の首には高額の懸賞金が賭けられ、町のあちらこちらに私と玄蘇の人相書が貼られていた。
朝鮮人に扮していたものの、朝鮮軍に見つかって、私たちは逃げさまよっていた。そして如安、義智、玄蘇らを見失った。一人、どうやって漢城に戻ればいいのか、私は途方に暮れていた。
道を聞くため、一人の娘に朝鮮語で声をかけようとした時、
「朝鮮男子は皆殺しにせよ!」
と後ろから声がした。振り返れば、我が軍!何で!?小西軍の一人が両班に扮した私に斬り付けてきた。私は、この男の腕を取って、腹を蹴り、刀を奪った。
「ヨギダ(こっちだ)!」
と私は、娘の手を取って路地に逃げ込んだ。小西軍をまくと、
「カムサハムニダ」
と娘は私に礼を言った。声が低かった。
「ナムジャ(男)!?」
と私が驚くと、娘――ではなく少年は頷いた。小西軍に見つかった男子は殺されるので、この辺の男子はみな女に化けているという。
聞かなかったことにしておこう。
正義の味方のつもり?
最低最悪。
いっそこのまま、サムライなんて辞めてもいいほど――
カテゴリ:小西行長くんの日記 | 2019-02-24 公開
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