李舜臣くんの日記:第18回 元均からの新年の挨拶
1月3日
年明け突然、慶尚右水使・元均(ウォン・ギュン)が、ここ全羅左水営を訪れることになった。昨年末、私から新年のご挨拶に向かうと連絡したのに。
私は配下の順天府使・権俊(クォン・ジュン)に急ぎ酒席を設けるよう命じた。私は左水営の内門で元均を出迎えた。
「おまえが新任の全羅左水使(チョルラチャスサ)か。」
と背の高い元均は私を見下ろした。
「初めてお目にかかります。」
と私は頭を下げた。
「女みたいな面(ツラ)しやがって。」
「ありがとうございます。」
「誉めてない!大丈夫かコイツは。亀甲船とやらは?」
ああ、亀甲船が気になって、新年早々自ら訪ねて来られたのか。私は高台に設けた酒席に元均を案内し、
「あれです。」
と上から見下ろした先の造船中の亀甲船を指差した。
「まだ半分も完成されていないようだが。」
「最強の軍船ゆえ造船には、通常より金も人手も時間も一〇倍かかるのです。」
「一〇倍!?明日、倭賊が侵攻して来たらどうするつもりだ!」
「明日、倭賊が侵攻して来ないかもしれませんので。」
元均は絶句した。
ひどく酔っぱらった元均が帰ったあとの夕暮れ。左水営の兵卒らに元均からいただいた餅を配った。
「左水使様の余裕はどこから来るのでしょうか。」
私の隣りで餅を食べながら権俊は言った。
「余裕なんて全然ないけど。」
「芯がぶれないようにお見受けします。」
「そのように見えるだけだ。今だって、これからあの人と付き合っていかなきゃいけないのか、と思うと憂鬱でならない。」
権俊は噴き出した。
「おいおい、補佐、頼んだよ。」
と私も笑って、餅を食べた。
カテゴリ:李舜臣くんの日記 | 2018-01-03 公開
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