李舜臣くんの日記:第6回 脇坂安治を目の前にして
3月13日
壬辰倭乱(文禄の役)が始まって二か月余り。
今度の八つ目の海戦相手は、太閤秀吉の秘蔵っ子・脇坂安治チャングン(将軍)だ。
迎え撃つ私が率いる南海岸の朝鮮水軍は、この度も元均(ウォン・ギュン)率いる東海岸の朝鮮水軍らとの連合で挑む。
既に脇坂安治は釜山(プサン)から出陣して、巨済島の見乃梁(キョンネリヤン)に停泊していた。
しかし我ら朝鮮連合水軍は、東風が強くてこれ以上、船を進めることができず、唐浦に停泊。ここで作戦会議を開いた。
「風がなんだ!ただちに見乃梁まで船を進め、脇坂安治を直撃すべし!!」
と元均が主張した。
「見乃梁は地形が狭く、朝鮮水軍の船が互いにぶつかって戦闘に支障をきたす恐れがありましょう。」
と私の部下の鄭運(チョン・ウン)が元均をなだめた。
「それに日本軍が陸に上って逃亡するおそれもあります。」
と私の部下の権俊(クォン・ジュン)も続いて元均を諭した。
「おとり船で見乃梁の南に位置する閑山島(ハンザンド)まで誘い出し、そこで脇坂を討つというのはどうだろう。」
と私が提案すると、
「妙案です。私がおとり船に乗り、おびき出しましょう。」
と私の部下の金浣(キム・ワン)が危険な任務にも関わらず名乗り出てくれた。
「我々は今日まで連戦連勝してきた。倭など取るに足らぬ相手、そのような策など必要ない。」
「脇坂安治を甘く見てはいけません。しじゅがたけ(賤ヶ岳)の七本槍の一人なのですぞ!」
「しじゅがたけ?何だそれは!」
「よくわかりませんが。」
「よくわかんないことを口にするな!」
それもそうだな。
だけど私という一つの狂気。
きっと正気の沙汰ではいられないんだ――
カテゴリ:李舜臣くんの日記 | 2016-03-13 公開
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