石田三成くんの日記:第49回 人を避くるの士


石田三成文禄二年二月一日

私は人を避(さ)く。(避ける)

君子は文(ぶん)を以って友を会(かい)し、友を以って仁を輔(たす)く(論語 顔淵)

士として文(詩書礼楽)に通じていないで、人と交わっても恥をかくだけではないか。

だから文に達するまで私は、人と交わりたいと思わない。しかしこのような士は、朝鮮で歓待されることはあっても、日本にあっては柔弱として嘲笑を買うだけである。

日本では、氷が張った堀を何周泳いでも平気なような男でもなければ、まるで女のよう、なのである。

 

数日前に、平壌から南下した明・李如松軍率いる大軍を、漢城(ソウル)の日本軍が迎撃。それも束の間、今度は李如松将軍に呼応した朝鮮孤軍が北上してくると報が入った。

日本スゴイ、日本スゴイ!!

いつまで勝利に酔いしれているのだ。ここ漢城にあって私は、好きでもない刀、鉄砲、槍など、まだ使えそうな武具をかき集めていた。

日本スゴイ、日本スゴイ!!

いつまで夢を見ているのだ。先日放った間者から、朝鮮孤軍の数と大将の名などを聞いた。

日本スゴイ、日本スゴイ!!

「いい加減、目を覚ましやがれッ!」

夜通し酒を呑み、緊張感のない諸将らに、桶に入った水を浴びせた。

おはよう。三成が全部やってくれるんじゃないの?

大谷吉継

大谷吉継

と後ろから、同じ朝鮮奉行の大谷吉継が朝日と共にやって来て、あくびをした。

「合戦というのは、まさに人の集まりであって、一人ではできないのだ。」

へえ、それは大変だ。

 

私は人を避く。

冷たいだのなんだの、どう思われても構わない。

一刻も早く、日本ではなく文に戻りたかった。

最悪の敵は大谷でも、ここにいる諸将でも、ましてや朝鮮軍でもなく、己であるためにも――

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