山内千代さんの日記:第15回 豊臣秀次
3月9日
私は本日、一豊の年若い上司であり、古書収集家の関白・豊臣秀次様からお薦めされて、お借りした古代中国古典『礼記』(らいき)をお返ししに大坂城を訪ねた。
「秀次様のように勉強家で教養の高い人には、周りに人が自然に集まってくるんだろうなあ。」
と私は秀次様に礼記をお返しした。
「古書を通して公家との交流が生まれたことも多少ありました。しかし今の世の中、勉強家など全くと言っていい程ウケません。」
と秀次様は礼記を受取り苦笑した。
「それではどんな人がウケるのでしょう。」
と尋ねると、
「軽薄に冗談ばかり言っている人です。」
と秀次様は答えた。
「礼記には礼とはつまり何か、その真理が書いてありますが、多数者にとっては他人と違うことが行儀が悪いのです。彼等は全ての差異、秀抜さ、個人的なもの、資質に恵まれたこと、選ばれた者を全て圧殺します。だから人気者になりたかったら、ひたすらみんなと同じ考え方をすることです。」
「そうかもしれません。しかし私は周りから排除されても志を遂げたいです。私が今日まで生きてこられたのは秀次様からお借りした古書のお陰です。」
「そう言っていただけると私の無駄な勉強もちょっとは救われます。」
合わせてそれらしいこと言ってしまったけれど実は礼記、難しいし長いわで大学と中庸を中心に他は目を通すくらいで終わってしまった。
今更なんだが、槍働き一筋の一豊は本なんか読んだことないし、何でこんな勉強家の宿老になってしまったのだろうか。
大丈夫なんだろうか。
いや、駄目だな。
何だかおかしくなってきて、秀次様の部屋を出たあと、私は一人で笑ってしまった。
カテゴリ:山内千代さんの日記 | 2014-03-09 公開
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