山内千代さんの日記:第38回 存在の耐えられない軽さ


山内千代3月9日

私は本日、一豊の年若い上司であり、古書収集家の関白・豊臣秀次様にお借りした古代中国の古典・礼記(らいき)をお返ししに大坂城を訪ねた。

「秀次様のように勉強家で教養の高い人には、周りに人が自然に集まってくるんだろうなあ。」と私は秀次様に礼記をお返しした。

古書を通して公家との交流が生まれたことも多少ありました。しかし今の世の中、勉強家など全くと言っていい程ウケません。」と秀次様は礼記を受取り苦笑した。

「それではどんな人がウケるのでしょう。」と尋ねると、「不真面目で冗談ばかり言っている人です。」と秀次様は答えた。

礼記には礼とはつまり何か、その真理が書いてありますが、多数者にとっては他人と違うことが行儀が悪いのです。

彼等は、全ての差異、秀抜さ、個人的なもの、資質に恵まれたこと、選ばれた者を全て圧殺します。だから人気者になりたかったら、ひたすらみんなと同じ考え方をすることです。

「そうかもしれません。しかし私は周りから排除されても志を遂げたいのです。私が今日まで生きてこられたのは秀次様からお借りした古書のお陰です。」

メジロちゃんと梅そう言っていただけると私の無駄な勉強もちょっとは救われます。」

秀次様と私は笑った。

存在の耐えられない軽さ。

全てはそこに収斂(しゅうれん)されてしまいそうな時代の中で、秀次様のように重さを持った人にどれだけ出逢えるだろうか。生きることが苦しくても、私はそれがちょっと楽しみだった。

前後の日記

« »

ランダムデイズ

関連トピック