明智光秀くんの日記:第35回 働くということ


明智光秀戦国22年10月12日

私は自分の住む滋賀県坂本城から馬を走らせ、松永久秀殿の奈良県多聞城を訪ねた。

朝日も昇ってないうちから何だよ、明智。」と松永殿は大きなあくびをして、私を出迎えた。

「ま、松永殿著作の男女の契りの指南書一万冊が、先日完売したんですよ!」と私は息を整えながら言った。

マジで一万冊も売れたの!?」「はい、侍から民百姓まで私自ら売って歩き、なんと上杉謙信殿含め多くの方にご購入いただきました。ファンレターも預かっています。

私は懐から、下は十代から上は七十代まで、本を購入してくださった方からのファンレター五通を松永殿に差し出した。

嗚呼、こんなふうに、自分がやって来たことが誰かに認められたのは何年ぶりだろう。明智、本当にありがとう。

松永殿はいきなり私に頭を下げた。「ちょっと、頭を上げてください。あなたらしくもない。」「いいじゃないか。こんな時くらい。

松永殿の声が、風邪でもないのに鼻声になっていた。信長公の命で松永殿の男女の契りの指南書を売るなんて、初めはいつものいじめにしか思えなかったのに。

けれど本が売れれば、自分のことのようにうれしかったのは何故だろう。気付けば、薄暗い松永殿の多聞城に朝日が差し込んでいた。

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