北条氏康くんの日記:第43回 LOOP
喉から手が出る程、関東全土が欲しいけれど、今の私には現状維持で精一杯。
他国の大名や豪族を蹴落として、時に蹴落とされて、毎日競争ばかりしている。そんなLOOPを生きていると息もできない程、ひどく疲れる時がある。
「そんなに疲れているのなら、殿はそこにただ座っているだけで大丈夫です。私が殿の代わりに北条の領土を広げに戦ってきますから。」
と家臣の綱成(つなしげ)は笑って、今日も出陣して行った。私と綱成が主従関係だからって、綱成が私の為に何でそこまでしてくれるのか時々わからなくなる。
「それはただ単に、今は亡き先代(氏綱)に生前から『ヘタレな氏康を支えてやってほしい』と頼まれているからですよ。」といくさから帰ってきた綱成は言った。
そして、「約束通り北条の領土を広げてきましたよ。」と敵の大将の旗印を私に献上した。「あれ、もっとうれしそうな顔してくださいよ、殿。」

北条綱成
「いくさでまた傷を負って、腕にそんな大きな包帯巻いて、亡き父上(氏綱)が見たらひどく悲しむだろうなって。」「殿ではなく?」「亡き父上が。」
綱成と私は笑った。私は綱成の為に何ができるだろう。
他国の大名や豪族を蹴落として、時に蹴落とされて、毎日競争ばかりしている。そんなLOOPを生きていると息もできない程、ひどく疲れる時がある。
けれど今の私は、裏切られてもいいくらい信じてみたい人がいる。戦国武将として生きる限り抜け出すことが許されないこのLOOPの中、裏切られてもいいくらい信じてみたい男がいるなんて、奇跡に近い。限りなくミラクルで奇跡に近いと思ったんだ。
カテゴリ:北条氏康くんの日記 | 2012-06-18 公開
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