松永久秀くんの日記:第39回 自分らしさの呪縛
ちょっと聞いてくれよ。俺様は今朝、満員電車ならぬ満員籠(がこ)に乗ったわけ。満員籠つーのは、ひとつの籠に25人乗ることができる巨大な籠な。籠を持ち上げてくれる人間も25人だぜ。
乗車して、俺様が安土城だよりを読み始めてから15分後。満員籠の乗車人数が31人になり、俺様は呼吸ができなくなった。いくさより過酷じゃねえか。
それから20分後、とことん個人の尊厳が奪われた俺様は、自分らしさの呪縛から解き放たれる、心地よさみたいなのを感じていた。そんで根性でまた、安土城だよりを読み始めた時、
「チカンです。」
と若い女が、俺様の腕をつかんで叫んだ。「こんな所で女のケツ触る程、女に苦労している俺様ではないわ。このブス!」と俺様が言ったら、「ひどいッ!」と女は泣き叫んだ。
その瞬間、隣りにいた図体のデカイ男に、俺様は持ち上げられ、籠の窓から放り出された。マジかよ。俺様は立ち上がり、羽織のすそについた砂ぼこりをはらった。ここから5キロ。徒歩でわざわざ信長に会いに安土城に向かう俺様。自分で言うのも何だが、すげえ健気だな。
カテゴリ:松永久秀くんの日記 | 2009-09-07 公開
« 加藤清正くんの日記:第17回 隣りの晩御飯 真田幸村くんの日記:第25回 怠惰な九度山蟄居生活 »
ランダムデイズ
- 藤原惺窩くんの日記:第17回 弟子の育て方を間違えている
- 毛利秀元くんの日記:第5回 自分らしく生きたくて死にそうだ。
- 豊臣秀吉くんの日記:第73回 甫田(ほでん)
- 豊臣秀吉くんの日記:第53回 政宗の弁明
- 藤堂高虎くんの日記:第6回 左水使様と対等であるためにも、きっと