淀殿の日記:第35回 十炷香-其三


淀殿9月26日

十種の香を聞き当てるゲーム・十炷香(じゅっちゅうこう)。先日、わらわと五大老で十炷香対決をやった。

結果は五大老の負け。彼らは罰ゲームとして、わらわの代わりに大野治長に理想の女性のタイプを聞くことになっていた。

は?大野治長の理想のタイプは北政所じゃと?!

自分の部屋で五大老から直接報告を聞いたわらわは絶句した。

北政所様は淀の方様にとってライバル。すみません…」と秀家殿は謝り、景勝殿は黙って泣いた。「謝るでない、泣くでない!余計みじめになるではないか!

しかしこの程度で大野治長を諦める淀の方様でもありますまい。」と利家殿がわらわに、真南蛮(まなばん)と寸聞多羅(すもんたら)という香木を差し出した。

淀殿

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これをわらわに?」「我等、もう一度、淀の方様と十炷香対決をしたくて…」と輝元殿が答えた。「意外に面白かったからのお。」と家康殿がキセルを吹いた。

私は、この国に幾つもの儚い香りがあったことをすっかり忘れていました。それを思い出させてくれた淀の方様には感謝しているのです。」と秀家殿は言った。

わらわが人に感謝されるようになったら終わりじゃ。」とわらわは苦笑した。

人情を無くした非情な世界の中で、香に似たほのかな温かさを思いがけず五大老から感じてしまったのは一生の不覚。

だからこそ、次の十炷香対決も五大老を負かしたい。そして五大老はどこまでわらわの片思いに付き合ってくれるのだろうか。そんなことを考えるだけで何だか少し楽しかった。(十炷香おわり)

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