真田幸村くんの日記:第21回 柄にもなく摘んできた橘
三週間前、大坂城で部署異動がまたあった。それに伴い、私は大坂城のトイレ掃除ならぬ、厠(かわや)掃除が主な仕事になった。
厠の外から、武芸に励む、豊臣譜代の武将が見えた。私は掃除ばかりで、進歩がない。けれど、焦るばかりで何もできない。そんな時、正社員武将の盛親先生が現れた。
「最近、大坂城の厠がすごくキレイで使いやすいと思っていたら、幸市が掃除していると聞いたよ。さすがだな。」と先生は持ってきた花を一輪挿しに挿した。
「大坂城の庭に、早くも橘(タチバナ)が咲いていた。真田幸村が磨いた厠にいいだろうと、柄にもなく摘んで来た。」「先生は私を誤解してます。厠掃除を馬鹿にしている、私は器の小さい人間です。」と雑巾を握りしめ、私は涙を落した。
盛親先生は私を励ますように、私の肩を叩いた。セイシャで先生のいない職場より、ハケンでも先生のいる今の職場でこれからも働きたい。私は、そんなふうに思うようになっていた。
カテゴリ:真田幸村くんの日記 | 2009-05-07 公開
« 加藤清正くんの日記:第13回 高山五月人形右近 上杉景勝くんの日記:第24回 私のムナピー »
ランダムデイズ
- 加藤清正くんの日記:第29回 宇喜多秀家に誘われて
- 豊臣秀吉くんの日記:第35回 二度目の日本通信使
- 石田三成くんの日記:第43回 絶交
- 福島正則くんの日記:第42回 スーパーヒーロー
- 藤原惺窩くんの日記:第6回 島津義久と伊集院忠棟の共謀