淀殿の日記:第2回 石田三成の失言
7月22日
太閤秀吉様の正室・北政所(きたのまんどころ)が、自分の部屋で、太閤様の側室であるわらわの産んだ、幼い秀頼をあやしていた。
「秀頼(ひでより)は本当に、色白でかわいいのお。あのサル(秀吉)の子とは思えんわ。」と北政所が言った。「わらわに似たのでしょう。」とわらわは言った。
「しかし、秀頼はたれ目で、優しい目をしておる。そなたのように、目が鬼のように、つりあがっておらぬわ。」
と北政所は言った。
その時、大坂城・事務方の石田三成と長束正家が、来月、大坂城で行われる茶会の件で、北政所に相談しにやって来た。
「おお、よい所に来た佐吉(三成)よ。秀頼のこのかわいさは、誰に似ていると思うか。とてもサルの子とは思えぬのじゃ。サルがこの淀にだまされておられるのではないかと、心配じゃ。」
と北政所は三成に言った。
わらわは三成をギロリと睨んだ。三成は、えーと、なんと申しましょうか、と顔に汗をかき、出た言葉が
「秀頼様は、どちらにせよ、そもそもそんなにかわいくありません。」
という失言であった。
しかし三成の隣りに座っていた、長束正家が、さすが石田殿、と笑いをこらえきれず笑い出し、すると秀頼まで長束につられて、何故か笑い出した。
カテゴリ:淀殿の日記 | 2008-07-22 公開
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